2020-01-01から1年間の記事一覧
どうも、こんにちは。 今回は高尾長良の『肉骨茶』です。2012年新潮新人賞を史上最年少受賞し、芥川賞候補にもなった作品です。 1.ざっくりあらすじ 拒食症の赤猪子が母と訪れたシンガポール・マレーシアツアー中に食事から逃れるため、以前自分の高校に留…
どうも、こんにちは。 今回は中村文則の『銃』です。2002年新潮新人賞を受賞し、芥川賞候補にもなった本作。作者はその後芥川賞を受賞し活躍しています。 1.ざっくりあらすじ ある日、偶然拳銃を拾ったニヒルな大学生。拳銃の美しさに魅了され、翻弄されて…
どうも、こんにちは。 今回は古川真人の『縫わんばならん』です。2016年新潮新人賞を受賞し、芥川賞候補にもなった同作。作者は2020年に『背高泡立草』で芥川賞を受賞しています。 1.ざっくりあらすじ 長崎の島の一族の物語である。一族が一つの島で繁栄し…
どうも、こんにちは。 今回は高橋弘希の『指の骨』です。2014年新潮新人賞を受賞し、2015年同作で芥川賞候補になっています。 1.ざっくりあらすじ 第二次世界大戦中、南方前線のパプアニューギニアへ移送された主人公は、所属部隊が作戦によりほぼ壊滅する…
どうも、こんにちは。 今回は三国美千子の『いかれころ』です。2018年新潮新人賞を受賞し、2019年同作で三島由紀夫賞も受賞しています。 1.ざっくりあらすじ 四歳の奈々子を主人公とし、未来の奈々子が語り手となって物語は進んでいく。奈々子がうまれた杉…
どうも、こんにちは。 今回は乗代雄介の『十七八より』2015年群像新人文学賞を受賞した作品です。 1.ざっくりあらすじ 「私」が亡くなった叔母のことを考えて、十七八のころの自分である「少女」を回想していく。少女は保健の授業で性的な発言をしたり、家…
どうも、こんにちは。 今回は石井遊佳の『百年泥』2017年新潮新人賞を受賞し、2018年芥川賞を受賞した作品です。 1.ざっくりあらすじ インドのチェンマイに住み、IT企業で日本語を教える主人公は、百年に一度の洪水に遭う。洪水が収まりはじめてから、会社…
どうも、こんにちは。 今回は岡本学の『架空列車』。2012年群像新人文学賞を受賞した作品です。 1.ざっくりあらすじ 人生に疲れた男が、ひとりで東北の海沿いの街に住み始める。生産的な活動を一切せずに過ごそうとしていた男は退屈に疲れ、無為な活動とし…
どうも、こんにちは。 今回は波多野陸の『鶏が鳴く』。2013年群像新人文学賞を受賞した作品です。 1.ざっくりあらすじ 高校三年生で受験勉強や恋愛などに悩む杉本伸太は、小中高を共にしたバンドメンバーでもある引きこもりの二階堂健吾への複雑な思いを抱…
どうも、こんにちは。 今回は横山悠太のデビュー作『吾輩ハ猫ニナル』。2014年群像新人文学賞を受賞し、芥川賞候補にもなった作品です。 1.ざっくりあらすじ 中国在住の日本人(おそらく作者)による中国人からみる日本語の難しさ(漢字・ひらがな・カタカ…
どうも、こんにちは。 今回は崔実のデビュー作『ジニのパズル』。2016年群像新人文学賞を受賞し、芥川賞候補にもなった作品です。 1.ざっくりあらすじ 在日朝鮮人として生まれたジニは、小学生まで日本の私立学校に通っていたが、中学生になるときに朝鮮学…
どうも、こんにちは。 今回は李琴峰『独り舞』。2017年群像文学新人賞を受賞した本作。作者は台湾人として生まれ、第二言語の日本語で書かれています。日本人を凌駕するその筆力には素直に脱帽してしまいます。 1.ざっくりあらすじ 台湾生まれのレズビアン…
どうも、こんにちは。 今回でようやく50回を迎えます。記念すべき50回目は、東日本大震災にあった女子高生を描いた北条裕子の『美しい顔』。2018年群像新人文学賞を受賞し、芥川賞の候補にも選ばれましたが、盗作疑惑などで世間を騒がせた本作。 区切りもい…
どうも、こんにちは。 今回は、20世紀初頭の日本文学にも大きな影響を与えたフランスのモーパッサンの処女作『脂肪の塊』。 1.読後感 なんともいえない後味の悪さが胸に残った 2.ざっくりあらすじ (1)普仏戦争 フランスとプロイセン王国(現ドイツ)…
どうも、こんにちは。 今回は、夏目漱石の『門』。『三四郎』、『それから』に続く三部作のラスト。 1.読後感 御米と宗助の認識の違いにやるせないかなしさを感じた。 2.ざっくりあらすじ (1)小六の問題 薄給の役所勤めの宗助は、妻の御米と共に日々…
どうも、こんにちは。 今回は、夏目漱石の『それから』。『三四郎』からはじまる三部作の一つに数えられている名作です。 1.読後感 不安、焦燥、孤独のなかに突き進んでいくようなもの悲しい気持ちにさせられた。 2.ざっくりあらすじ (1)代助 三十歳…
どうも、こんにちは。 今回は、日本で最初のノーベル文学賞を受賞した川端康成の『伊豆の踊子』 1.読後感 美しいかなしさが心のなかにふっと舞い落ちるような、そんな終わり方だった。 2.ざっくりあらすじ (1)踊子 一人伊豆の旅へ来ていた大学生の主…
どうも、こんにちは。 今回は、日本を代表するリアリズム文学を書いた志賀直哉の代表作『暗夜行路』。本作は彼の唯一の長編小説である。 1.読後感 数々の苦難の先にみえる小さな希望に胸を突かれる思いになった。 2.ざっくりあらすじ (1)時任謙作 時…
どうも、こんにちは。 今回は、中村文則の『掏摸』。私は初めて読みましたが、2005年に『土の中の子供』で芥川賞を受賞して、現在も話題作に事欠かない純文学作家です。 1.読後感 独特の重さがある文体とラストの微かな希望のような終わりに、呆気に取られ…
どうも、こんにちは。 今回は、太宰治の『富嶽百景』。 1.読後感 わりにさっぱりした感覚になった。 2.ざっくりあらすじ (1)富士へ 主人公(作者)は井伏鱒二を訪ね、富士三景に数えられる御坂峠の茶屋と行く。彼はそこで仕事をゆっくやろうとする。…
どうも、こんにちは。 今回は、ヘッセの代表作の一つ『春の嵐』。音楽家の青春を瑞々しく描いています。 1.読後感 青春の熱情とそれを越えていく境目の昔を懐かしむような、心地よいものが身体にすっと入って来た。 2.ざっくりあらすじ (1)足 音楽家…
どうも、こんにちは。 今回は、ジャンポール・サルトルの代表小説『嘔吐』。当時名の売れていなかった彼はこの作品において広く認められ、その後のフランス文学界の巨匠という地位を手に入れていく。 1.読後感 自分の存在がふわふわと急にどこかに浮かんで…
どうも、こんにちは。 今回は、前回に続き、石原慎太郎の代表作の一つ『処刑の部屋』。『太陽の季節』から変わらず暴力的で救いの無い内容ですが、作中の主人公克己の何をやりたいかなどあれこれ思い悩まずに行動するだけ、という考えの徹底には美しさすら感…
どうも、こんにちは。 今回は、石原慎太郎の堂々たるデビュー作『太陽の季節』。彼はこの作品で芥川賞を受賞しています。そして若者たちに大きな影響を与え、太陽族なるものたちが現れます。 1.読後感 誰も救われない、悲しき青春劇が繰り広げられ、胸の奥…
どうも、こんにちは。 今回は、芥川龍之介の晩年の代表作『歯車』。短編ということもありサクサクッと読了しました。 1.読後感 あまりにも有名な最後のただ一文「誰か僕の眠っているうちにそっと絞め殺してくれるものはないか?」。この一文に全ての感情を…
どうも、こんにちは。 今回は、トルマーン・カポーティの代表作の一つ『ティファニーで朝食を』。 1.読後感 胸の奥がざわざわとするのと同時に、なしつぶてな爽快感のようなものを感じた。もちろん映画は観ていたわけだけれど、ヒロインであるホリーの描写…
どうも、こんにちは。 今回は、三島由紀夫 の初期代表作の一つ『仮面の告白』。 1.読後感 気味の悪いものが胸いっぱいに広がるようだった。歪んだ爽快感と陶酔の入り混じる奇妙な物語だった。 2.ザックリあらすじ (1)幼少期からの仮面 物語は、題名の…
どうも、こんにちは。 今回は、谷崎潤一郎の代表作の一つ『痴人の愛』。 1.読後感 ねっとりと濃厚なもやにつつまれたような気分になる。主人公の譲治を馬鹿にしつつも、自分のことを思いハッとさせられる。 2.ザックリあらすじ (1)譲治 田舎から出て…
どうも、こんにちは 今回は、宮下奈都『羊と鋼の森』。 1.読後感 北海道の田舎町が舞台の小説だが、不思議とほっこりする。 2.ザックリあらすじ (1)ピアノとの出会い 何事にも大きな関心を持たない高校生の外村は、学校に来た調律師の板鳥の仕事を見…
どうも、こんにちは 今回は、アルジェリア生まれのノーベル賞作家カミュの代表作の一つ『ペスト』。正直、この時期だから手に取ったというのが大きな理由だったが、ノックアウトされた。 1.読後感 平和の裏側には、重苦しい人生の不条理さがのたうちまわっ…