純文学1000本ノック 128/1000 トルーマン・カポーティ『真夏の航海』
こんにちは。
今回は『ティファニーで朝食を』や『冷血』で有名なアメリカの作家『トルーマン・カポーティ』の初期作品『真夏の航海』です。
1.ざっくりあらすじ
主人公のグレディは17歳の女性。上流階級の生まれで、理知的な一方、周囲の習わしについていけず浮いた存在で母や結婚して家を出た姉とも衝突している。夏休みに両親がバカンスへ行き、グレディは一人家に残る選択をする。彼女は誰にも秘密にしている恋人がいた。恋人であるクライドはダウタウンに住む、労働階級の長男で心優しいが粗暴な青年である。彼らは夏を共に過ごし、そのままでは別れる未来を予感して、結婚する。グレディは紹介されたクライドの家族に馴染めず、姉家族の別荘へ行く。そこで妊娠を知る。追ってきたクライドとグレディはニューヨークへ戻るが、めちゃくちゃな心境でマリファナを吸って車を疾走させる。
2.作品解剖
(1)文体★★★
三人称で比喩や詩的な表現を多用している。まだ未完成な部分も感じるが、今の事象から大きく飛躍する感性は目を見張るものがある。
(2)構成★★☆
上流階級の娘の火遊びから、結婚と妊娠を経て、事態は深刻になってゆく。
(3)論理★★☆
男女両方の視点で描かれるが、心情もよく研究されており、論理的に疑問に思う部分はなかった。
(4)テーマ★★☆
階級社会のことをベースに、若者の青春や、悲哀の恋と悲劇が描かれている。その意味でロミオとジュリエットの系譜に通じている。
3.感想
後半の展開は場面と場面の飛躍を感じるが、それは悪い意味ではなく、流れるように変わっていく。やや幻想的な文体の力が存分に発揮された作品だと思う。