純文学1000本ノック

ただひたすらに純文学の読書感想を並べていきます。

純文学1000本ノック 47/1000 夏目漱石『それから』 のらくら男が動くとき

どうも、こんにちは。

 

 今回は、夏目漱石の『それから』。『三四郎』からはじまる三部作の一つに数えられている名作です。

 

f:id:yumeyume16:20200819165102j:plain

 

1.読後感

不安、焦燥、孤独のなかに突き進んでいくようなもの悲しい気持ちにさせられた。

 

2.ざっくりあらすじ

(1)代助

三十歳で無職の代助は、大学を卒業後、実業家の父に金をもらいながら、家を構え本を毎日読む生活を送っていた。潔癖な性格の代助には父や同じく父の会社で働いている兄などの欺瞞が感じられ、そういった生活を送ることは全く考えられなかった。

(2)転機

三年前送り出した大学の同期の平岡が代助を訪ねて来た。平岡の妻は代助が仲人を務めた三千代という女だった。平岡は京都での仕事で失敗し、職を失い苦労していた。代助は三千代からの頼みで金策に走り出す。

(3)縁談

代助はかねてより父親から結婚相手を何度も紹介されていた。しかし、そのたびに適当な理由をつけて断っていた。今度は、縁の強い地元の有力者の令嬢を紹介された。代助はその場を繕いはっきりした答えを出さずに逃げてしまう。

 (4)三千代

兄嫁のはからいでなんとか金を用意できた代助は三千代へ金を貸す。代助は三千代と会っているうちに過去自分がその女を愛していたことを思い出す。三千代の方でも放蕩する平岡への愛情がうすいように見られ、代助は家や平岡や自然な気持ちのことを考えて葛藤する。

(5)行動へ

代助は三千代へ自らの想いをぶつけ、後に引けない状態で父の縁談を断る。そのうえで平岡とも直接話し、嘘偽りのない自らの気持ちを告白する。平岡は代助の父へそのことを手紙を出す。代助は実家から完全に縁を切られ、一人不安のなか電車に乗り込みどこまでも行こうとする。代助には周囲の赤いものがいやに目につく。

 

3.魅力

明治維新以降、一挙に欧米の思想を取り入れた日本では、それを得たインテリ層たちが代助のように家と個人の自由(自然)の間で大きく揺れていた。その揺れと家の援助による自らの生活という代助の矛盾点をついた本作は、見事で読みごたえがある。文体は三人称だが、代助との距離が非常に近く、その視点を捉え続けている。あらゆる物事の欺瞞や問題を俯瞰した代助の目は、一見立派ではあるが、現実に生きる平岡などからは全く行動的でなくてダメだと一蹴される。最終的に代助は、家や友、世間を敵に回す行動に出る。本作は相変わらず倫理道徳という時代の変遷と共に移り変わるものに束縛されつづける現代人全般にも大いなる問いかけになるだろう。

 

面白かったらクリックしてねホーミー↓

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村