純文学1000本ノック

ただひたすらに純文学の読書感想を並べていきます。

純文学1000本ノック 45/1000 志賀直哉『暗夜行路』 苦難の先にあるもの

どうも、こんにちは。

 

 今回は、日本を代表するリアリズム文学を書いた志賀直哉の代表作『暗夜行路』。本作は彼の唯一の長編小説である。

 

1.読後感

数々の苦難の先にみえる小さな希望に胸を突かれる思いになった。

 

 

2.ざっくりあらすじ

(1)時任謙作

時任謙作は、小説家であり、お栄という昔からの女中に家事を任せ生活している。彼は幼少期父親から祖父へ引き取られたことがあり、父親との関係は微妙である。下品で軽蔑していた祖父は既に他界している。

(2)放蕩

謙作は友人らと現在のガールズバーのようなところへ出入りし、朝まで遊ぶ生活を送る。彼は頻繁に女性へ目移りするが、どれも途中で気落ちしてしまう。その理由は、彼が過去に親戚であり幼馴染の愛子に求婚し、有耶無耶に断られたことから来る自信のなさであった。また、昔からの女中であるお栄にも欲情してしまう。彼はこのままの生活ではいけないと決心し、単身で尾道へ移り住む。

(3)尾道での決断

尾道でさまざまな景色を見た謙作は、すこし落ち着き執筆生活をはじめる。しかし、次第にお栄への気持ちが高ぶっていき、お栄へ求婚する。さらに兄の信行伝いでも援護するように手紙を出す。祖父の妾でもあったお栄はそれを断固拒否する。

 (4)事実

信行からの手紙で、謙作は、祖父と母の間の過ちでできた子だということを知る。彼は衝撃を受けるが、それを受け入れようとする。やがて病気になったところで東京へ戻り、お栄のことも話し合いの末諦め、京都へ移り住む。

(5)直子

謙作は京都の住まいの近所で見つけた直子という女性に心惹かれ、兄や知人、友人の力を借りて結婚を申し込む。晴れて二人は結婚し、愛情に満ちた生活をはじめる。一方、中国へ渡っていた女中のお栄が騙され金も尽きて朝鮮にいることを知る。謙作はお栄を迎えに朝鮮へ向かう。そのとき、直子の従兄が謙作の家へ泊まり、直子は過ちを犯してしまう。

(6)境地

その後二人の子が出来たが、謙作は、直子を表面的には許しても、心の底で許せぬまま生活を続ける。直子もそのことに気付き、疲弊していく。ついに、謙作は汽車へ駆け乗ろうとした直子を押し飛ばしてしまう。謙作はこのままではいけないと思い、一人鳥取の山奥にある寺へ旅立つ。しばらく時間が経ち、そこで登山をした謙作は明け方の景色に強く感動する。それから高熱で倒れた謙作のもとへ直子が駆けつけ、ずっと謙作のもとにいて、どこまでもついていこうと決意する。

 

3.魅力

ひどく悲しい出来事の連続のなかで、当の本人である謙作は、落ち込みもするが、わりにあっけらかんと切り替える。そこに志賀直哉流の人間が描かれ、見た者を深みへ惹き込んでいくのだろう。写実の名手といわれた志賀の文体は独特で、視たものをなるべく正確に描く力量がある。多様なリアリズムが氾濫する現代の文芸界で、この作品は日本近代小説の基礎として不変のものでありつづけるのだろう。

 

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