純文学1000本ノック

ただひたすらに純文学の読書感想を並べていきます。

純文学1000本ノック 41/1000 サルトル『嘔吐』 存在に対する吐き気が続く男の行く末は

どうも、こんにちは。

 

 今回は、ジャンポール・サルトルの代表小説『嘔吐』。当時名の売れていなかった彼はこの作品において広く認められ、その後のフランス文学界の巨匠という地位を手に入れていく。

 

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1.読後感

自分の存在がふわふわと急にどこかに浮かんでいくような曖昧な不安を心に感じた。

 

2.ざっくりあらすじ

(1)日記

本文はロカンタンという歴史学者の日記として綴られていく。彼は、ある日海辺で水切りの為小石を手に持ち、不意に吐き気が自分を襲うのを感じる。それから、彼は自分の中の何かが変わってしまったと思い、日記をつけれるようになる。

(2)孤独な生活

ロカンタンは、図書館へ通ってロルボンという偉人の伝記を書こうとしている。しかし、それは思うように捗らない。彼は生活の中で、図書館で頻繁に会う独学者と「鉄道員のたまり場」というバーのマダムと性的関係を持つくらいしか人間関係を有していない。

(3)吐き気

小石の一件以来、彼はあらゆる場所で吐き気を催す。それを感じなくなるのはあるレコードを聞いた時だった。彼は吐き気の正体を理解する。あらゆる存在への嫌悪感とも言うべきものだった。

 (4)アニー

彼は以前から心残りとしていた女性アニーから手紙を受け取り、5年ぶりに再会する。彼女は「完璧な瞬間」を追い求め、演劇をしていたが、ある時、その達成を諦めて、パトロンから金を貰いながら遊んで暮らす「余生」を始めている。彼は彼女の考えに、自らと同じものを感じる。彼自身「冒険」を求めて旅をしていたが、それが全く真の冒険とならないことを最近気づいたのであった。彼は彼女を引き留めることをせず、2人は再び別離する。

(5)音楽のようなもの

彼はブーヴィルという街を出ることにする。彼は少しばかり関わりのあった人へ別れを告げに行く。「鉄道員のたまり場」に寄った時、彼は再びあるレコードを聞き、その音楽のようなものが自分にも作れないかと考える。その作品は、人に自らの存在を恥ずかしく思わせるようなものでなければならない。彼はそれによってのみ、自らの過去を振り返り、自分を受け入れることができるだろう、と考える。

 

3.魅力

最初にこの作品にあるのは、その見事なプロットであろう。ロカンタンという一人の人物を通じ、作者は読者に対して見事に「自分の存在を恥ずかしく思わせる作品」と提出するのである。そして、その存在への恥ずかしさは作中の至るところで登場し、それに耐えがたくなった彼が、独白する164p~171pは壮絶である。個人的には、作品の結論としてあまりに内的な積極性の獲得であり、不満は残るが、しかし、一人間としての「存在」に対する苦悩を描き出した様は見事である。

 

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