純文学1000本ノック

ただひたすらに純文学の読書感想を並べていきます。

純文学1000本ノック 130/1000 黒田夏子『abサンゴ』

こんにちは。

今回は2013年に芥川賞を受賞した黒田夏子の『abサンゴ』です。

先に謝罪しておきたいですが、一読してみて現在の私にはよくわかりませんでした。

 

1.ざっくりあらすじ

主人公が自らの幼い少女時代を思い出し、親や周囲の生活環境を感じとりながら、成長していく様を、ひらがなを多用して回想しながら描き出している。

 

2.作品解剖

(1)文体★★☆

現在の主人公が過去の主人公を三人称的な視点で描いている。ひらがなが多用されており、日本の古典的な雰囲気や詩的な雰囲気を感じる部分も多いが、一読のかぎりでは読みにくいという感想につきる。

(2)構成★★☆

大まかには少女時代から、中年のことまで時系列に沿って書かれているような気がしたが、いかんせん文章がうまく頭に入ってこないので、読んでいる現在がいつなのか、不明なまま進んだ。

(3)論理★★☆

独特な文体をしているが、内容は私小説的な雰囲気で、とくに論理不足は感じなかった。

(4)テーマ★★☆

一読のかぎりでは不明であった。タイトルや、冒頭と終わりにかけてを考えると、いくつかの選択肢のある人生の岐路で、それを意識的に人生を回想してみたという感じだろうか。

 

3.総合評価と感想

★★★☆☆

文学として、細部に味わいがあり、全体に詩的な雰囲気が漂うことは理解できるが、作品全体として本当に効果を発揮し得ているのか、再考した方が良いのではないだろうか。今作を論理的に高く評価した人々は、大衆との差別化へ意識を置くあまり、誰も理解しえないゆえに芸術である、という考えになり今作を賞賛しすぎてしまってはいないだろうか? そんな疑問が出てきた。自分自身きちんと読めたとは思えず、理解できない苛立ちのこもった批評になってしまったかもしれない。時間をおいてもう一度再読してみようと思う。