純文学1000本ノック

ただひたすらに純文学の読書感想を並べていきます。

純文学1000本ノック 40/1000 石原慎太郎『処刑の部屋』 ただ行動すること

 

どうも、こんにちは。

 

今回は、前回に続き、石原慎太郎の代表作の一つ『処刑の部屋』。『太陽の季節』から変わらず暴力的で救いの無い内容ですが、作中の主人公克己の何をやりたいかなどあれこれ思い悩まずに行動するだけ、という考えの徹底には美しさすら感じて強いました。

新潮文庫太陽の季節』に収められています。

 

1.読後感

ぼろぼろの肉体で、なおも行動を続けようとする克己に、衝撃を受け、胸を打たれた。

 

2.ザックリあらすじ

(1)裏切り

名門大学生の克己は、高校からの友人の良治を裏切り、その見返りとして、金を受け取りに他大の荒くれ者たちのたまり場に行く。彼は、良治が以前ほど喧嘩や女遊びに共に荒れることが無くなり、吉村という頭でっかちの同級生とつるんでいることを不満に思っていた。その為、良治がイベント興行をした時に、その売り上げを狙ってきた他大の学生たちへ情報を流し、良治を襲わせた。良治はあっさりと金を渡し、そのことに克己は失望していたが、主犯の竹島が持った拳銃を見て、彼は事実を知り、竹島を挑発する。

(2)リンチ

挑発された学生たちは、克己を取り押さえて椅子に縛り付け、壮絶なリンチを始める。彼らは以前克己にのされた仲間を呼び、そいつらにとどめを刺させようとする。仲間を待つ間に、彼らの仲間の石川とそのいとこの顕子が部屋に来る。

(3)顕子

顕子は克己を見て、大きく驚く。彼女は以前、克己に酷い扱いを受けていた。克己は大学対抗戦終わりのお祭り騒ぎの中、友人と顕子たちをナンパし、友人の発案で彼女たちに睡眠薬を盛り、顕子をレイプした。その後、顕子と付き合ったが、彼女に飽きたという理由で彼女を捨てていた。顕子はそれを思い出し克己をビンタする。その話を聞いていた石川は、男の正体が克己だと分かり、椅子に縛られた克己を打ち倒し、靴で克己の頸動脈を踏みつけ、気を失わせて、また蹴って起こして、という残虐な痛めつけをする。

 (4)行動

克己は、石川から謝罪するように求められるが、応じようとしない。彼は、自らのやりたいことは徹底的にやるが、やりたくないことには一切屈しないのである。やがて、克己に恨みを持つ者たちが部屋に集まり、ナイフを取り出す。顕子は嘘を吐き、ナイフを受け取って克己の腕を縛っているベルトを切り落とす。結局、克己はさらに痛めつけられ、裏路地に放り出される。彼は、諦めずに人のいる方へ進み続ける。

 

3.魅力

太陽の季節』も衝撃的だったが、これはもっとより深い、青年たちが悩む「俺は何をすればいいんだろう」「何をするのが正解なんだろう」という問題に根本から立ち向かった秀作である。主人公の克己によれば、それは「やりたいことを徹底的にやり続ける」ことであり、彼は現に常に自らの信条を信じて、行動に移していく強さがある。しかし、今作ではそれが仇となって、壮絶なリンチを受けるのだが、そうされながらも、彼は考えを曲げず、自らの勝利を信じている。行動主義とも言うべきこのスタンスは、現代においても若い人にぜひ読んでほしい一作である。

 

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