純文学1000本ノック

ただひたすらに純文学の読書感想を並べていきます。

純文学1000本ノック 44/1000 中村文則『掏摸』 

どうも、こんにちは。

 

 今回は、中村文則の『掏摸』。私は初めて読みましたが、2005年に『土の中の子供』で芥川賞を受賞して、現在も話題作に事欠かない純文学作家です。

 

f:id:yumeyume16:20200714150902j:plain

1.読後感

独特の重さがある文体とラストの微かな希望のような終わりに、呆気に取られた。

 

2.ざっくりあらすじ

(1)スリ

主人公の僕(西村)は、スリを生業として生きている。同時に、スリは彼にとって刺激と快感を与える物でもあり、生きがいのようにもなっている。彼は意識的にスリを働きながらも無意識にスリを行ってしまうこともある。

(2)子供

西村は、スーパーで母親の指示によって万引きする子供を見つけ、万引きGメンにバレていることを教える。チック症の母親は邪魔されたと思い、西村へ憤るが、金がありそうな服装から、売春の誘いを持ち掛ける。西村はその気が無いが、母親の激情により、関係を持つようになる。

(3)石川

石川は西村が以前コンビを組んでいたスリだったが、石川が所属していた危険な組織による強盗事件へ強制的に参加させられて以来、見ることは無かった。その組織の長である木崎という怪しい男が西村へ近づき、西村は石川が消されたことを知る。さらに木崎は西村へ再び強制的なミッションを与える。

 (4)ミッション

西村は木崎から与えられた危険なミッションをこなしていく。最後のミッションの難しさから自らに危険が及ぶことを予感した彼は、万引きをしていた子供と母親に会い、子供が施設へ入れるように手続きする。彼は最後のミッションをなんとか完遂するが、木崎によってあえなく、腹部を刺されてしまう。人通りの無い細い路地で、血まみれになる彼はいつの間にかポケットに入っていた500円玉によって、自分の存在を気付かせようと通行人へ投げようとする。

 

3.魅力

全体を暗く重苦しい雰囲気が覆っている。それは、この作者が持つ文体によるものだろう。その中から、掏摸という行為への意識と感覚が生々しく描かれている。作者は純文学作家でありながら、ストーリーを起伏に富んだ面白いものとして描いている。そこも作者の魅力だろう。

 

面白かったらクリックしてねホーミー↓

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村