純文学1000本ノック

ただひたすらに純文学の読書感想を並べていきます。

純文学1000本ノック 49/1000 モーパッサン『脂肪の塊』 人間のエゴの醜さを暴く

どうも、こんにちは。

 

 今回は、20世紀初頭の日本文学にも大きな影響を与えたフランスのモーパッサンの処女作『脂肪の塊』。

 

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1.読後感

なんともいえない後味の悪さが胸に残った

 

2.ざっくりあらすじ

(1)普仏戦争

フランスとプロイセン王国(現ドイツ)との間におこった戦争の最中、プロイセン軍から占領されたフランスのルーアンに住んでいた富裕層たちは、脱出のため乗合馬車で、まだ占領されていないル・アーヴルへ逃れようとした。そこには富裕層のほかに一人の娼婦が乗り込んだ。彼女は、その太った姿から「ブール・ド・シュイフ:脂肪の塊」というあだ名をつけられていた。乗客たちは彼女を蔑んで見ていた。

(2)進まない道中

道を阻む雪のせいで、乗合馬車はなかなか進まなかった。当初予定していたトートという村への到着も大幅に遅れ、乗客は疲弊し空腹になっていた。そこへ、ブール・ド・シュイフが足元から大きな籠をとりだし、そのなかの食べ物を食べはじめた。ほかの乗客たちは我慢できず、彼女から食べ物を分け与えてもらう。乗客たちは手のひらを返して、彼女と親しく話すようになった。

(3)トートにて

ようやく到着したトートだったが、そこでもプロイセン軍の将校が乗客たちを取り調べた。取り調べが終わってから、宿の主が現れて、将校が御用だと言って、ブール・ド・シュイフを呼びに来る。ブール・ド・シュイフは会いに行くが、すぐに顔を真っ赤にして戻ってくる。乗客たちが訳を聞いても彼女は教えなかった。翌日、出発しようとすると、馬車が準備されていなかった。

 (4)足止め

乗客たちは、馬車を発車しないのが、将校の命令であること、将校がブール・ド・シュイフを抱こうとしていることを知り、はじめ、将校とプロイセンへの怒りから、ブール・ド・シュイフの味方にたった。が、翌日も発車されず、かたくなに将校を拒否し続けるブール・ド・シュイフへ苛立ちを募らせ始める。

(5)画策

 乗客たちは、会議をして、ブール・ド・シュイフをどうにか将校のもとへいかせるように画策する。結果、ブール・ド・シュイフは乗客たちのために身を捧げる。乗客たちは宴を開き、尼僧ですら酒を飲んだ。翌日発車した馬車でブール・ド・シュイフを待っていたのは、冷ややかな扱いだった。昼時になり、みな食事を始めるが、誰一人として食事の準備を忘れたブール・ド・シュイフを助けるものはいない。彼女はひとり、悲しみと虚しさに耐えながら、涙を流しつづけた。

 

3.解説と魅力

 

モーパッサンのデビュー作でもある本作は、人間の汚い欲望をまざまざと描き出した見事な作品である。自分の利益になる場合は、いい顔をしていた人間たちが不利益を被ったときに見せるおぞましさのようなものが生々しく表現されている。これは明らかに人類の普遍的な姿の一面であり、今日もつづく悲しきエゴの正体である。

 

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