純文学1000本ノック

ただひたすらに純文学の読書感想を並べていきます。

純文学1000本ノック 36/1000 トルーマン・カポーティ『ティファニーで朝食を』 青年期の村上春樹に自信を無くさせた早熟の天才

どうも、こんにちは。

 

今回は、トルマーン・カポーティの代表作の一つ『ティファニーで朝食を』。

 

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 1.読後感

胸の奥がざわざわとするのと同時に、なしつぶてな爽快感のようなものを感じた。もちろん映画は観ていたわけだけれど、ヒロインであるホリーの描写に、オードリーヘップバーンを感じず、あれ?と思った。その疑念はどうやら正しかったようで、解説で村上春樹がきっちりと書いてくれていた。

 

2.ザックリあらすじ

(1)回想

主人公の一人称視点で物語は進んでいく。トルーマン・カポーティの分身とも言える彼は、作家である。ニューヨークに住む彼は、久しぶりバーテンダーのジョーに呼び出される。話はホリーという一人の女性についてである。彼女がアフリカにいたという情報がジョーの元に届いたのだ。主人公はそれから、彼女との出来事を回想しはじめる。

(2)ホリー・ゴライトリー

彼女は、かの有名なオードリーヘップバーンが映画で演じたヒロインである。原作では、非常に自由で、おてんばで、いたずらっぽくて、性にあけっぴろげである。彼女は主人公のマンションの下の階に住んでおり、夕方頃に起きて、毎日パーティーをするような生活をしている。彼女が危険な男から主人公の家に避難してきたことから、二人の仲は始まる。主人公は彼女の奔放な性格に魅了される。彼女は主人公のことを兄のフレッドに似ていると言い、フレッドと呼ぶようになる。

(3)ホリーの謎

ホリーはモデルをしているようだが、それ以外に社交界に顔を売り、お金を稼いでいる。彼女は、マフィアのボスであるサリー・トマトに見初められ、彼の刑務所に通うことで少なくないお金を受け取っている。彼女は過去について多くを語りたがらず、主人公が聞いたのはO・Jというハリウッドのプロデューサーからの話からだけだった。O・Jによるとホリーはハリウッドで成功目前になり、ニューヨークへ飛んでしまったらしい。しかし、O・Jは彼女の才能に惚れ込み、今でも交際は続いている。

(4)仲たがいと仲直り

主人公とホリーは、ホリーによる主人公の小説への意見がきっかけで仲たがいをしてしまう。少し時間が経ち、彼は彼女をつける怪しい中年男の存在を見つける。その男はドクと言い、ホリーの旦那だった。ドクは気のいい男で、家出したホリーをずっと探していたらしい。主人公はドクに協力し、ホリーと会わせる。しかし、彼女は、ドクを故郷のテキサスに帰らせる。主人公と彼女はこの一件で仲直りする。

(5)事件

ホリーの友人であるモデルのマグは、ホリーがいいように扱っていた大富豪のラスティーと結婚する。マグの彼氏だったホセ(ブラジル人で、ブラジル政府の要職についている)とこっそり付き合っていたホリーは喜ぶが、同時に兄フレッドの訃報が耳に入る。彼女は荒れ、家の物を壊す。ホリーはやがてホセの子を妊娠し、二人は結婚を真剣に考えるが、刑務所のサリー・トマトへ暗号を送ったとして彼女は逮捕されてしまう。ホセは保身の為、すぐに去ってしまう。主人公との乗馬で流産したホリーは、ホセのことは諦めたが、ブラジル行きのチケットをそのまま使い、ブラジルへと飛び立つ。

 

 

3.魅力

ホリーという唯一無二のキャラクターこそがこの作品の最大の魅力であり、最大の鍵だろう。もちろん、彼女を中心とした波乱万丈なストーリーも面白く、どんどん読み進めることを助けているが、この作品がここまでの人気を今なお博しているのは、彼女の魅力に他ならない。逆に、村上春樹が解説で指摘するように、カポーティの初期短編のような鋭く美しい描写は鳴りを潜めている。それは、カポーティ自身がより簡潔な文章を求めたからであり、そこにこの作品の大衆的な成功もあるのだろう。

 

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