純文学1000本ノック

ただひたすらに純文学の読書感想を並べていきます。

純文学1000本ノック 39/1000 石原慎太郎『太陽の季節』 愛することを知らぬ青年たち

どうも、こんにちは。

 

今回は、石原慎太郎の堂々たるデビュー作『太陽の季節』。彼はこの作品で芥川賞を受賞しています。そして若者たちに大きな影響を与え、太陽族なるものたちが現れます。

 

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 1.読後感

誰も救われない、悲しき青春劇が繰り広げられ、胸の奥がグッと苦しくなった。

 

2.ザックリあらすじ

(1)荒んだ青春

三人称で「竜哉」を中心に物語は進んでいく。名門大学に通う竜哉は、仲間たちと女遊びから賭け事まで荒んだ生活を送っている。一方で、彼は孤独な戦い方を気に入りボクシング部に入っていた。

(2)英子

英子は友人の女性二人と街で遊んでいたところ、竜哉たちの一団にナンパされる。彼女たちは彼らについていく。飲み会は想像以上に盛り上がり、ナンパの先陣を切った竜哉は英子を独占する。真に愛する人を亡くした経験から、男から奪うような愛情表現しか出来なかった英子は、竜哉は他の男とは違うのではないかと思う。

(3)男と女

竜哉も英子は他の女と違うと思う。二人はやがて愛し合うが、英子は竜哉に対しても、奪うような愛情表現しかできない。今までに無い雰囲気に圧倒された竜哉は英子に熱中し、他の男といるのを見て、人生で初めて女に嫉妬する。二人の想いは夜のヨット上ではじめて合致する。しかし、そこから英子は失っていた女らしさを思い出し、それを執拗に竜哉へ見せるようになる。

 (4)愛憎

竜哉は自分に惚れ込む英子に他の女と同じよう嫌気が差してくる。彼は英子の前で他の女と寝た話や遊んだ話を聞かせる。彼はその話を聞いても英子が嫉妬しながら彼を許すのを見ると、英子を連れ、同級生と兄と他大の女のバカンスに連れていく。そこで彼は他大の女を抱く。英子は竜哉への報復として彼の兄と寝る。兄は英子に惚れ込み、竜哉とどっちへ来るか賭けをする。竜哉は自信満々に賭けに乗り、結局英子は竜哉の元へ帰る。竜哉はそれからもたびたび兄へ英子を売ろうとする。英子は金を工面してそれを防ぐ。そのうち英子は竜哉の子を妊娠する。竜哉は産ませようとするが、急に嫌になり、英子におろすよう言う。堕胎の時期が過ぎて手術を受けた英子は帰らぬ人となる。

 

3.魅力

ここまで、なまなましく息苦しい青春を描ける作家が他にいるだろうか。男の性とも言うべき、女に甘え意地悪をしてしまう構図は、作者により、より暴力的に、鮮明に描かれている。いわゆるお坊ちゃんの戦後世代ということで投げやりだったことはあるだろうが、いつの時代にも普遍性のある人間の悪魔的な陽気を感じた。

 

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