カミュ 『ペスト』 ペストという不条理を題材にそれと戦い続ける人間たちを描いた大作 純文学1000本ノック 32/1000
どうも、こんにちは
今回は、アルジェリア生まれのノーベル賞作家カミュの代表作の一つ『ペスト』。正直、この時期だから手に取ったというのが大きな理由だったが、ノックアウトされた。
1.読後感
平和の裏側には、重苦しい人生の不条理さがのたうちまわっているということを思い出される。多くの苦しいことの一方で、一種の諦めのような感覚を持ってそれに向かい続ける医師リウーの姿に胸が苦しくなる。
2.ザックリあらすじ
(1)オラン
この作品は、医師リウーの視点を主として進んでいく。オランは当時フランス領アルジェリアにある人口二十万ほどの港町である。その街にペストがやってくる。はじめはネズミたちが大量に死に、後にネズミを媒介としたペストが人間を殺し始める。
(2)封鎖
語り手でもあるリウーは医師であり、この状況を案じいち早くペストの疑いを考え始める。カステルという老医師が彼に協力し、会議の場で知事へ危険を伝える。その結果、オランの街は全面的に封鎖される。リウーの妻は病気で街の外の病院に入院している。
(3)リウーの周りの人々
グランという役所で働く素直な老人、コタールというグランと同じマンションに住む犯罪者(しかしペストでうやむやになる)、タルーという旅人、フランス在住新聞記者のランベールなどが出てくる。
(4)封鎖後の日々
日々、死亡者数は増加していき、街には暗い雰囲気が立ち込めるようになる。リウーは自分のやるべきことはペストと戦い続けることであると考え、せわしなく患者たちを回っている。記者のランベールはフランスに置いた彼女を考え、自分の幸福のために何とか街から出ようとする。タルーはリウーに申し出て、ボランティアの保健部隊を編成する。統計に強いグランはここに所属し活躍する。唯一、犯罪者のコタールはペストにより、自分の立場が安全になったことを喜び、楽しそうに日々を送るようになる。
(5)変化
コタールの口利きによって、あと一歩で街から出られるところまで来たランベールは、リウーにも妻がいながら奮闘していることを知り、自分もボランティアとしてペストと闘うことを決意する。ペストの初期に、ペストは神によってもたされた罰であると演説していた司祭は、ボランティアに参加し、少年の凄惨な死を目撃することで、考えを改め、ペストと闘って行く必要を説くようになる。
(6)終息
老医師のカステルが生成した血清と一月の寒さが効果を上げ、死亡者数はみるみる減っていく。やがて街には希望の雰囲気が出始め、知事は終息宣言をする。しかし、その直前に感染したタルーはペストによって死んでしまう。悲しみに暮れるリウーは、終息後の電報によって妻も病によって死んだこと知る。街が喜びに包まれる中、一人自暴自棄に駆られた犯罪者のコタールは銃撃事件を起こし、逮捕される。医師のリウーはペストの菌は死滅しないことを知っている。彼は死んだ仲間たちの為に、この記録を残すことにする。
3.魅力
不条理というものに常に目線を投げかけていたカミュは、『異邦人』に続き、この長編小説を書きあげる。ここでは『異邦人』のムルソーほど頑固で無いにしろ、同じように自らの意志を貫き通す人々の群像劇が描かれている。物語全体を流れる思想は現代にも通用する不変なもので、この時期にこそ読んでもらいたい。
面白かったらクリックしてねホーミー↓