純文学1000本ノック

ただひたすらに純文学の読書感想を並べていきます。

2020-01-01から1年間の記事一覧

ゲーテ 『若きウェルテルの悩み』 時代を越えて私たちに響く心の声 純文学1000本ノック 31/1000

どうも、こんにちは 今回は、ドイツ文学界のレジェンド、ゲーテの代表作の一つ『若きウェルテルの悩み』。 1.読後感読み終わった後、しばらく同じように恋愛や人間関係に苦しんだ若いころの自らの心のうちを眺め、もの思いに耽った。この作品は現代におい…

江國香織 『きらきらひかる』 独特のカタチを持った夫婦とその周囲の物語 純文学1000本ノック 30/1000

どうも、こんにちは 今回は、江國香織の『きらきらひかる』を読んだよ。初江國香織。いい。 1.読後感作品に包まれる優しさと哀しさのバランスが絶妙で、爽快だった。 2.ザックリあらすじ (1)新婚生活 物語は、睦月(むつき)という勤務医の男性と笑子…

吉本ばなな『アムリタ』 幻想的な日常の物語 純文学1000本ノック 29/1000

どうも、こんにちは 今回は、吉本ばななの人気作『アムリタ』を読んだよ。幻想的で悲劇も喜劇もまぜこぜな不思議な物語だけど、どこか愛おしい雰囲気を持った作品だった。 1.読後感子どもの頃の夏、が持ってるような、甘くて楽しい日々からの、終わりが近…

村上春樹『海辺のカフカ』 生死の境を越えた謎深き世界と、自らの運命に翻弄される少年の物語 純文学1000本ノック28/1000

どうも、こんにちは。 今回は、日本の代表的な作家である村上春樹の謎多き名作『海辺のカフカ』を読んだよ。15歳の僕(田村カフカ)の成長物語であり、生死や人間を超越した存在が登場する謎多き物語だった。読者の考えに委ねるということで、公式な見解は村…

サン・テグジュペリ『夜間飛行』 一人の幸福より崇高な職人の有り様 純文学1000本ノック27/1000

どうも、こんにちは。 今回は、『星の王子さま』で今なお有名なサン・テグジュペリのもう一つの代表作『夜間飛行』。僕も、サン・テグジュペリは『星の王子さま』しか読んでいなかったので、この作風の落差にはたまげたよ。 1.読後感最初は堅苦しいと思っ…

ガルシア・マルケス『百年の孤独』 マコンドとブエンディーア一族の歴史から見るラテンアメリカ 純文学1000本ノック26/1000

どうも、こんにちは。 今回は、現実的なものと幻想的なものとを融合させて、一つの大陸の生と葛藤の実相を反映する豊かな想像力の世界を構築したとしてノーベル文学賞も受賞したガルシア・マルケス。彼の代表作の1つである『百年の孤独』。今もなお、ラテン…

坂口安吾『堕落論』 人間の実相と日本人の堕落の必然性 純文学1000本ノック 25/1000(番外編)

どうも、こんにちは。 コロナウィルスが世界を賑わせているので、お家で自粛しつつ、本を楽しんでるよ。 今回は番外編ということで、坂口安吾の有名な『堕落論』について。これは非常に当時センセーショナルで今なお有名な評論だ。 1.読後感 従来の価値観…

純文学1000本ノック 24/1000 村上龍『限りなく透明に近いブルー』 非現実的な世界観の中で苦しむ若者たち

どうも、こんにちは。 今回は村上龍のデビュー作『限りなく透明に近いブルー』。どんな作家でもデビュー作は傑作な場合が多いと思うが、この『限りなく透明に近いブルー』は純文学の新人賞「群像新人賞」を獲得後、国内純文学の最高峰である「芥川賞」を受賞…

純文学1000本ノック(番外編) 24/1000 コナン・ドイル『緋色の研究』 シャーロックホームズの誕生と純文学とミステリ

どうも、こんにちは。 今回は番外編ということで、シャーロックホームズが誕生した作品、コナン・ドイルのデビュー作『緋色の研究』。純文学漬けの日々だった訳だけど、久しぶりに脇道によってみたよ。 1.読後感すっきりとした。事件→推理→解決というミス…

純文学1000本ノック 23/1000 夏目漱石『吾輩は猫である』 猫を語り手とした痛烈な社会批判と漱石の未来予想図

どうも、こんにちは。 今回は夏目漱石のデビュー作にして、未だ衰えることを知らない明治の大人気小説『吾輩は猫である』。漱石がこれを書いたのが40歳の頃で、それから50歳で亡くなるまでの10年でこれだけ多くの名作を遺したって言うんだから驚きだね…

純文学1000本ノック 22/1000 J・D・サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』 世界中の若者を熱狂させた物語

どうも、こんにちは。 今回は累計部数6000万部を記録し、伝説的な人気を誇る『ライ麦畑でつかまえて』を紹介するよ。画像は村上春樹訳の『キャッチャー・イン・ザ・ライ』。どちらも同じ作品だけど、タイトル訳としては『ライ麦畑でつかまえて』が日本語…

純文学1000本ノック 21/1000 森鴎外『舞姫』 鴎外の青春と苦悩、そして罪の意識

どうも、こんにちは。 今回は明治を代表する文豪 森鴎外の『舞姫』。ちなみに僕は井上靖氏の現代語訳版を読んだよ。現代では鴎外のクズっぷりを評されることも多いけど、一方で人間の相反する感情が描かれた優秀な作品だよね。 1.読後感元々、現実の結末を…

純文学1000本ノック 20/1000 三島由紀夫『金閣寺』 美への認識と破壊

どうも、こんにちは。 今回は三島由紀夫作品の中でも名高い『金閣寺』。なかなか読み進まなくて珍しく読むまでに2日かかってしまったよ・・・。 下が英語版だけど、英語版の方がかっこいいね・・・。 1.読後感とにかく体力を使った・・・。もちろん本自体…

純文学1000本ノック 19/1000 遠藤周作『白い人』 人間の本質とは何か

どうも、こんにちは。 今回は遠藤周作が芥川賞を受賞した『白い人』。これは衝撃的な作品だったね。前回『深い河』で感激し今回も遠藤周作。いやあ、読んでよかった。 1.読後感直前までの燃え上がるような展開の中、身体中の血が震え立つほどの衝撃を受け…

純文学1000本ノック 18/1000 吉本ばなな『キッチン』 台所からの哀しみと愛

どうも、こんにちは。 今回は吉本ばななのデビュー作『キッチン』、前回読んだ『TUGUMI』以来の吉本ばなな作品でした。やっぱり彼女の書く作品はとても優しく温かみの溢れるものだった。 1.読後感 吉本ばななの持つ美しい描写と特に温かみのある今作はその…

純文学1000本ノック 17/1000 又吉直樹『火花』 漫才という芸術に人生をかけた青春

どうも、こんにちは。 最近は今日みたいにもったり暖かい日があるかと思えば、急に寒くなったりするね~。コロナもあるし、引き続き体調管理に気をつけようね。 さて、今回は一昨年の芥川賞を獲得し、大きな話題となった又吉直樹『火花』。話題性だけじゃな…

純文学1000本ノック 16/1000 遠藤周作『深い河』 巡礼者たちが見たガンジス河

どうも、こんにちは。 トイレットペーパーが普通に家に無くなったので買いに行ったら買い占められてたよ。困っちゃうね。 今回は遠藤周作『深い河』。心にあらゆる傷を持った巡礼者たちがインドへ行き、ガンジス河へ出会う。その川は生も死も、喜びも哀しみ…

純文学1000本ノック 15/1000 谷崎潤一郎『卍』 繰り返される愛憎の果て

どうも、こんにちは。 コロナ・ウイルスもいよいよ蔓延してきた感じだね。いつかかってもいいように、みんなも日ごろから免疫つけておこうね。 今回は谷崎潤一郎『卍』。初谷崎潤一郎だったけど、その独特の文体といやらしいまでに綿密に描かれた愛憎の動き…

純文学1000本ノック 14/1000 ヘルマン・ヘッセ『車輪の下』 小児教育の光と闇

どうも、こんにちは。 昨日見た『キャッチミー・イフ・ユー・キャン』に大分感化されましたポカンです。 今回はノーベル文学賞作家のヘルマン・ヘッセ『車輪の下』。いや、描写がとにかく多い。そして、ここがフランスとドイツの差なのか、フランスが力の抜…

純文学1000本ノック 13/1000 J.D.サリンジャー『フラニーとズーイ』 エゴ(社会)への嫌気と解放

どうも、こんにちは。 人生2度目のぎっくり腰をやってしまって眠るのも辛い日々を送ってるよ。 今回は『ライ麦畑でつかまえて』で有名なさリンジャーの『フラニーとズーイ』を読んだよ。こちらももちろん有名な作品ではあるのだけど・・・前作で相当衝撃を受…

純文学1000本ノック 12/1000 フランソワーズ・サガン『悲しみよ こんにちは』 美しい海と恋と青春の残酷さ

どうも、こんにちは。 いやー、天気のいい日が続く中、連日読書読書の毎日だよ。 「晴耕雨読」ならぬ「晴読雨読」 今回はパリジェンヌ、フランソワーズ・サガンの『悲しみよ こんにちは』を読んだよ。いやーーー素敵だね、シニカルな描写も、海の美しい描写…

純文学1000本ノック 11/1000 吉本ばなな『TUGUMI』 美しい海とひねくれ少女の物語

どうも、こんにちは。 ラップトップ用のデスクを買ったけど、グラグラして使いにくいよ。 さて、今回は 吉本ばなな『TUGUMI』。実は吉本ばななさんは1度読んで(たしか不倫に関わる女性の物語だった)、あまりの心理描写の濃さに途中で断念した苦い過去があ…

純文学1000本ノック 10/1000 ヘミングウェイ『老人と海』 ヘミングウェイのたどり着いた極地

どうも、こんにちは。 コロナウィルスが国内感染を続々と増やしているね。みんなも気を付けよう。 今回はヘミングウェイの『老人と海』。実はこの作品は昔一度 読もうとして断念した作品だ。なぜなら最初の漁の準備やら日常の生活ぶりと会話からなる単調な描…

純文学1000本ノック 9/1000 芥川龍之介『地獄変』 芸術と人間

どうも、こんにちは。 遂にコロナウイルスさんが国内で感染確認(中国との関係なく)されたね。実はこれ大分前から起きていた事態で厚労省がパニックにならないように検査を拒否し続けただけだと思う今日この頃。 さて、今回は 芥川龍之介の『地獄変』を読ん…

純文学1000本ノック 8/1000 夏目漱石『坊ちゃん』 勧善懲悪物語とその影

どうも、こんにちは。 昨日はプールでしこたま泳いできたせいで身体中が悲鳴を上げているよ。 さて、今回は日本の文豪 夏目漱石の『坊ちゃん』を読んでみたよ。純粋な娯楽(本作は恐らくそれがメインだが)としても非常に面白く、その裏側の漱石の苦悩を考え…

純文学1000本ノック 7/1000 ジャン・コクトー『恐るべき子供たち』 子供たちの純粋さ故の恐怖

どうも、こんにちは。 寒い日が続いてるのでコロナ・インフル・風邪、お互い体調管理には気をつけようね。 今回は ジャン・コクトーの『恐るべき子供たち』を読んでみたよ。いやあ、ビックリするくらい綺麗で残酷な表現に目から鱗。 1.読後感 僕はこれを2…

純文学1000本ノック 6/1000 石田衣良『娼年』 娼年の心の動きとSEXを軽やかに

どうも、こんにちは。 今回は 石田衣良の『娼年』を読んでみたよ。こちらの作品は純文学ではないという向きも多いだろう(実際直木賞の候補作に入っている)。しかし、純文学に必須な芸術性ともいうべきものはある程度担保されている作品でもある。 1.読後…

純文学1000本ノック 5/1000 カズオ・イシグロ『日の名残り』 本物の執事が見た「品格」

コロナウイルスさん、こんにちは。 順調に感染者を増やしているようで、その怖さとともに家にこもっている僕は「家にこもる」ことの許しが得られるようで複雑な心境だよ。 今回は日系イギリス人(ほぼイギリスで過ごしている為、その呼び方が相応しいのかは…

純文学1000本ノック 4/1000 シェイクスピア『ハムレット』 ハムレットの狂気の中に見出したもの

コロナウイルスさん、こんにちは。 先週から家にこもり出したので僕は読書に精を出しているよ。 今回は純文学?ではないかもしれないけど、今なお世界中の作品で引用される数々の名言を残したシェイクスピアの戯曲『ハムレット』を読んだよ。 僕が作中で気に…

純文学1000本ノック 3/1000 川端康成『雪国』 究極の審美眼を持った島村の悲哀

お久しぶりです、こんにちは。 今回は 川端康成の『雪国』を読んでみたよ。 1.読後感 綺麗な空想の中に自分も入り、そのやるせなさ(徒労)を島村と一緒に感じているみたいだ。島村の「徒労だね」という言葉の通り、終わりの見える情事(妻と子がいる為、…