純文学1000本ノック 38/1000 芥川龍之介『歯車』 死を決意した男の心境
どうも、こんにちは。
今回は、芥川龍之介の晩年の代表作『歯車』。短編ということもありサクサクッと読了しました。
1.読後感
あまりにも有名な最後のただ一文「誰か僕の眠っているうちにそっと絞め殺してくれるものはないか?」。この一文に全ての感情を引きずられていった。作品全体は主人公の死への象徴のようなものが至る所に現れ、重苦しい雰囲気が続いていた。
2.ザックリあらすじ
(1)レインコート
物語は主人公の一人称「僕」によって進行していく。彼は知人の結婚式に参加する為、地方へ向かっている。道中で理髪店の主人からレインコートを着た幽霊の話を聞く。彼は滞在先のホテルや姉の夫の死などあらゆる場面でレインコートと出会う。
(2)死
彼は今の生活や自らの精神病的な気質、罪などに不満を抱き続けている。彼は生活を続けるあらゆる場面で死を意識する。それは突然目の裏に浮かぶ歯車だったり、電話から聞こえたモオルという言葉だったり、妻の実家で突如上空に現れた飛行機だったりする。彼は家に帰り、天井を見つめ色々なことを思い出していると、妻が部屋に入ってきて、彼の死を予見したようなことを言う。
3.魅力
歯車は今なお芥川龍之介の代表作と捉えられている。私が読んだ岩波文庫版には一緒に晩年の代表作『玄鶴山房』と『或阿呆の一生』が収められている。勿論、歯車は単体でも代表作に変わらないだろう。しかし、私は上記の二編を含めた晩年の暗澹とした彼の作風全体こそが芥川龍之介の晩年を代表する一種の”作品”であると考える。その理由は、そこには芥川が太宰ほど公ではない(ただ太宰は作品の為に自虐的すぎる節があった)にしても、自らの罪の意識を冷静に分析し、それと向き合った葛藤がまざまざと垣間見えるからである。私は欺瞞に満ちた世の中において、断固としてこの作家の良心の告白を楽しみにしている。例えそれがどんな非難や糾弾を受けたとしてもそこに、人間の本性があると思うからである。
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