純文学1000本ノック

ただひたすらに純文学の読書感想を並べていきます。

純文学1000本ノック 34/1000 谷崎潤一郎『痴人の愛』 女に翻弄される男

 

どうも、こんにちは。

 

今回は、谷崎潤一郎の代表作の一つ『痴人の愛』。

 

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 1.読後感

ねっとりと濃厚なもやにつつまれたような気分になる。主人公の譲治を馬鹿にしつつも、自分のことを思いハッとさせられる。

 

2.ザックリあらすじ

(1)譲治

田舎から出て来て高給取りのサラリーマンとして働く譲治。「私はこれから、あまり世間に類例が無いだろうと思われる私達夫婦の間柄に就いて、出来るだけ正直に、ざっくばらんに、有のままの事実を書いて見ようと思います」。この物語は彼の告白という形で物語が進行する。会社では勤勉で「君子」のあだ名を得ている譲治だが、一般的な結婚には懐疑的で27になっても独身である。

(2)ナオミ

日曜の休みに浅草のカフェに出入りしていた譲治は、そこの女給見習いであるナオミに目を付ける。彼女は年端も行かない少女だが、将来の美しさを予感させる西洋風の容姿があった。譲治は彼女を引き取り、育て上げ、うまくいけば結婚も辞さないというような計画を立てる。

(3)大森での同棲

譲治は、計画をナオミに持ち掛ける。彼女の反応は思いのほか良く、すぐに彼らは同棲する借家を探す。ナオミの希望で西洋風の元画家のアトリエに彼らは住み始める。最初のうちは、ナオミがまだ15なこともあり、友達のように二人は過ごす。譲治はナオミに音楽と英語を習わせる。彼らは籍を入れるが、世間的には親戚同士という体を続ける。

(4)成長

譲治は帰宅したナオミの身体を洗い流してやり、その身体の成長が著しいので日記をつける。ナオミの身体は大人の女性に近づいていく。一方、英語の勉強は芳しくなく、発音はいいが文法などは全く出来ないことに彼は苛立ち、自ら指導もするようになる。譲治の厳しい指導に次第にナオミは不貞腐れる。彼はナオミの機嫌を直そうと態度を改める。

(5)外へ出るナオミ

譲治に対して強気に出るようになったナオミは、次第にわがままな気性を強める。ある日、彼女の紹介で譲治は男子大学生たちと知り合う。彼女はダンスを習いたいと言い、常時もそれに付き合う。二人はバーに行き、ダンスをする。そこにはナオミの知り合いの男子大学生たちがいて、ナオミは親し気に話を交わす。

(6)疑念

男子大学生たちは大森の借家にも顔を出すようになる。ある日、譲治は会社の連中にナオミの存在を冷やかされる。会社の連中が言うにはナオミは淫売で男子大学生の数人と関係を持っているという。家に帰った彼はナオミにその話をし、ナオミはしおらしく日々を過ごすようになる。

(7)鎌倉

ナオミの提案で、二人は夏の間鎌倉に間借りする。譲治が仕事で遅く帰るとナオミは家にいない。譲治は大家を問い詰め、ナオミの元に頻繁に大学生の熊谷が出入りしていることを知る。ナオミを探した譲治はマントの下に何も纏わないナオミと男子大学生たちの一座を見つけ、激昂する。

(8)真相

ナオミを軟禁した譲治は、大森の家を改める。そこで男子大学生の浜田に会い、正直な彼からナオミと大学生たちの淫らな関係や懺悔を聞く。譲治はナオミを連れ鎌倉を引き払い、大森に戻る。二人は再び共に生活をしだすが、譲治は疑念からナオミのことを疑い続ける。彼は会社を休み、ナオミの浮気の現場を突き止める。彼は激昂しナオミを家から追い出す。

(9)その後

ナオミのいない苦しさに耐えかねた譲治は、浜田を頼りナオミの居場所を探る。ナオミは男の家を転々としていることが分かり、譲治はナオミを捨てる決意をする。しかし、その後ナオミが荷物を取りに来たと、たびたび大森の家を訪れ、譲治の決意は揺らぐ。結局、彼はナオミの魅力の前に彼女の奴隷のようになり、夫婦に戻る。

 

3.魅力

痴人の愛」というタイトル通り、ナオミという痴人に翻弄され続ける譲治の姿が告白体で生々しく描き出されている。ナオミの素朴な魅力と西洋風の顔つきに惹かれた譲治だったが、次第に彼はナオミの持つ痴女性と彼女の肉体の魅力になすがままになっていく。男性の虚しき情欲を見事に描き出した作品である。

 

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