純文学1000本ノック

ただひたすらに純文学の読書感想を並べていきます。

純文学1000本ノック 11/1000 吉本ばなな『TUGUMI』 美しい海とひねくれ少女の物語

どうも、こんにちは。

ラップトップ用のデスクを買ったけど、グラグラして使いにくいよ。

 

さて、今回は 吉本ばななTUGUMI』。実は吉本ばななさんは1度読んで(たしか不倫に関わる女性の物語だった)、あまりの心理描写の濃さに途中で断念した苦い過去がある。ただ、今回は海辺の田舎町(西伊豆が舞台だそう)の青春譚ということもあって、全部読み切れたよ。

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 1.読後感

夏の海辺で甘酸っぱい果実を頬張ったような、身体は疲れて潮風で少しベタつくんだけど、心は不思議と爽快な気分になれる作品だった。もちろん内容はハッピーエンドと言って差し支えないだろう。

 

2.ザックリあらすじ

 

(1)まりあとつぐみ

つぐみという病弱で酷く口の悪い少女と、そのいとこのまりあはつぐみの父が経営する海辺の山本屋という旅館に住んでいた(まりあは母と居候の形)。2人が中学生の頃に祖父の死があり、祖父を慕っていたまりあに、つぐみが祖父のフリをして手紙を出すという悪戯をした事件をきっかけに2人は本当に仲良くなった。

(2)上京

居候状態だったまりあとその母は父(別な家庭を持っていた)の離婚を機に東京へ出て一緒に住むこととなった(まりあ自身も東京の大学を受験していたのでどのみち東京へ出る予定だった)。上京する直前に今まで犬猿の仲だったつぐみと裏の家の犬のポチをまりあが仲直りさせた。

(3)夏

夏前につぐみから旅館はでやめてしまうという電話を受けたまりあは夏休みに海辺の町に帰ることにする。帰ったまりあに対してつぐみは憎まれ口を叩きながら迎え入れてくれる。つぐみはポチと散歩をするほど仲良くなっていた。

(4)恭一との出会い

頻繁にポチを連れて散歩するつぐみとまりあは海辺の町に新しく建設中のホテルの御曹司の恭一に出会う。彼も犬の権五郎を連れ独特な雰囲気を持ち、つぐみは彼に興味を抱く。つぐみが熱を出し、恭一がその見舞いに来た時にした話(自分も昔病弱でそのときに母からもらったタオルを心の支えにずっと見ていたという)を機に、つぐみはストレートに恭一へ告白する。

(5)揉め事

恭一とつぐみ、まりあ、それからつぐみのとても優しい姉の陽子、4人で仲良く夏を楽しんでいるが、ある日恭一がチンピラに襲われたという(彼の父がホテルを建設することで地域からは少なくない反発があった)。彼は夏祭りで犯人を偶然見つけ、下駄で殴りつける。しかし、後日復讐に権五郎を攫われてしまう。結局、つぐみが川に溺れかけていた権五郎を救い出す。

(6)復讐

権五郎の件で怒った恭一は町でチンピラの1人に出会った際に、神社に引きずっていき、めちゃくちゃに殴りつけた。恭一は報復を警戒し、2日後に一旦権五郎を実家に帰すことにするが、一歩早くチンピラに権五郎を再び攫われてしまう。権五郎は今度は見つからなかった。失意のまま恭一は実家に帰る。つぐみは悲しみに落ちたフリをしていたが、心の中では憎しみの炎が燃えていた。夜ごと裏庭に穴を掘り、ついにはチンピラをおびき寄せると巨大になった穴に突き落とした。陽子が異変に気付きチンピラを助け出すも、あまりに体力を使いすぎ病弱なつぐみは入院してしまう。

(7)別れ

見舞いに行ったまりあにつぐみは、今度こそダメかもしれない、と珍しく弱音を吐く。まりあは敢えて冷たく別れ、弱ったつぐみを否定した(つぐみは病室から出るまりあに罵詈雑言を浴びせかける)。東京に戻るとつぐみの母から連絡があり、つぐみが危篤だという。しかし、翌日にはスッカリ回復してしまう。つぐみから電話があり、手紙を出したという。しばらくして届いた手紙は遺書のようなものだったが、まりあのことをつぐみが最も信頼していたことが分かる内容だった。

 

3.魅力

とにかく描写が美しい。ともすれば読みにくくなってしまいがちな長い形容や情景・心理描写を吉本ばななは見事に美しく、繊細に仕上げている。今作では美しい海辺の町の朝・昼・夜それぞれの美しさがふんだんに詰め込まれていた。また、作者があとがきでつぐみは自分自身だと語るつぐみのあまのじゃくでウィットに富んだキャラクターの魅力は人を惹きつけて離さないものがあった。特に今作のテーマは青春の物語であるので、吉本ばななを初めて読む男性には是非オススメしたい。

 

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