江國香織 『きらきらひかる』 独特のカタチを持った夫婦とその周囲の物語 純文学1000本ノック 30/1000
どうも、こんにちは
今回は、江國香織の『きらきらひかる』を読んだよ。初江國香織。いい。
1.読後感
作品に包まれる優しさと哀しさのバランスが絶妙で、爽快だった。
2.ザックリあらすじ
物語は、睦月(むつき)という勤務医の男性と笑子(しょうこ)という在宅で翻訳の仕事などをこなす女性の二視点で進行していく。睦月はゲイで紺という大学生の恋人がいる。笑子には躁うつ病のような精神疾患とアルコール依存がある。二人はお互いの状況を受け入れ、結婚というある種社会的責任のようなものを果たすという利害関係も一致し、結婚した。
(2)笑子の体調悪化
笑子は元々浮き沈みが大きいが、精神科医に、結婚すれば解決する、と言われていたにも関わらず、母親が子を求めることなどに疲れ体調を悪化させていく。次第に優しい睦月に対しても、嫌気が差し強く当たるようになってしまう。
(3)睦月の友人たち
ある時、笑子が睦月の職場へ行き、笑子の提案により、睦月の友人たちとホームパーティをすることになる。そこには睦月の恋人の紺も招かれ、みんなは子供の頃のようにはしゃぎ、楽しい時間を過ごす。
(4)告白
次第に元気を無くしていく、笑子を見かねた睦月は、笑子に元気を出させる作戦を考え実行する。しかし、それは笑子の反感を買い、笑子は唯一の親友である瑞穂と絶交してしまう。睦月はこれ以上周囲へ嘘を吐くことへの限界を感じ、瑞穂へ自らがゲイであることを告白する。
(5)親族会議
瑞穂は睦月の告白を笑子の両親に伝える。笑子の両親は二人の家に乗り込んでくる。睦月の両親もそこへ呼ばれ、話し合いが始められる。結局、話し合いは当事者が関わらない内に紛糾し、結論が出ないまま終わる。
(6)紺の旅立ち
睦月の恋人の紺は、唐突に旅に出る。その間に、睦月が紺と別れた旨、笑子と睦月は笑子の両親へ釈明する。悲しみに浸っていた睦月だが、笑子は何故か紺が帰ってくるのを確信している。結婚記念日の日、睦月が笑子に呼ばれ、マンションの別な部屋へ行くと紺がいる。紺の旅立ちは笑子との共謀だった。三人は仲良くパーティーをする。
3.魅力
さっくりとしつつも魅力的な本作。巻末で「基本的な恋愛小説を書こうと思いました」と筆者の江國香織が言っている。勿論、設定はごく普通ではなく、突飛なもので突飛な関係に見えるが、「普通」というは何なのか、改めて考えさせ、全ての人が自由に恋愛することを当たり前と思わせてくれる素晴らしい作品である。これが、まだLGBTに理解の少ない1991年に書かれたことも江國香織の素晴らしさでもあるだろう。
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