純文学1000本ノック

ただひたすらに純文学の読書感想を並べていきます。

純文学1000本ノック 20/1000 三島由紀夫『金閣寺』 美への認識と破壊

どうも、こんにちは。

今回は三島由紀夫作品の中でも名高い『金閣寺』。なかなか読み進まなくて珍しく読むまでに2日かかってしまったよ・・・。

「金閣寺 本」の画像検索結果

 

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下が英語版だけど、英語版の方がかっこいいね・・・。

 

 1.読後感
とにかく体力を使った・・・。もちろん本自体は非常に緻密で面白いが、至らない頭のせいもあり三島由紀夫の美しい文章を咀嚼するのに大変時間のかかった読書だった。ただ、わりにアッサリした結末には幾分爽快感も残る不思議な小説だった。

2.ザックリあらすじ

(1)幼少から少年期

物語は回想という形で進んでいく。幼少期より溝口は吃音に悩み、言葉以外にも感情などあらゆるものが吃っているという風に考えていた。そして、自分のことは誰にも理解できないのだと思い、そのことを誇りにしていた。また、無学な父から教わった金閣寺が最も美しいという話は彼の中での金閣寺を現実以上に美しいものとして捉えさせていた。ある時、金閣寺のように美しいと感じる有為子という少女にアクションを起こそうとするも吃音を馬鹿にされて相手にされなかった。そのことが知れ渡ったことで辱められ、彼は彼女を恨み呪った。

(2)2人の死

その1件から数か月後に有為子は死んでしまう。しかし、有為子はその後も彼の心に残り続け、この後もその幻影がたびたび出てくる。また、結核を患っていた父が死んでしまう。死の直前に少年は父に連れ出されて、初めて金閣寺を見た。思っていたほど美しく思えなかったが、地元に戻るとより美しく金閣寺は思い出されるのだった。

(3)鹿苑寺

溝口は父と僧学生時代同期だった鹿苑寺の和尚に引き取れる。そこで溝口は同じように徒僧としていた鶴川と親しくなる。鶴川は東京出身で溝口の持っていなかった快活さを十二分内包した人物で、溝口の吃音を全くこけにせず、溝口の闇を光として照らしてくれる存在だった。

(4)大谷大学への進学

溝口は鹿苑寺の和尚(老師)に見込まれて、寺の費用で大学へ進学させてもらうこととなった。しかし、入学直前に起こしたアメリカ軍兵士に指示され、その娼婦の腹を踏みつけた事件が明るみに出て、彼は老師からの非難を覚悟したが、老師は何も言うことなくその1件を不問とした。

(5)片輪の柏木との出会い

入学当初は常に鶴川といた溝口だが、それでは他に友人も出来ぬということで、次第に2人は離れていった。鶴川はその性格からすぐに友達を増やしたが、溝口は吃音を意識しすぎるあまり孤独だった。そんな折、彼が目に付けたのが内纏足(足が内側に折れ曲がった障害)の柏木だった。柏木は酷いひねくれもので溝口の吃音をこっぴどくからかった。しかし、不思議と溝口はその柏木という男の哲学的で闇に造脂の深いところに惹かれていく。

(6)柏木の悪

鶴川は柏木との仲を良く思わず忠告をするが、それに反するようにふたりの仲は深まっていく。柏木は自らの醜い足を使い、女たちに憐憫の感情を持たせて身体や金を搾取していた。溝口も柏木の紹介で何度か童貞を捨て、人生の快楽を得るチャンスを迎えるも、その度に金閣寺のことが思い起こされてそれはうまくいかなかった。

 (7)鶴川の死

大学の休暇の間、実家に戻っていた鶴川は突然の交通事故で帰らぬ人となってしまう。その知らせを聞いた溝口は自らと光の橋渡しが無くなってしまったということへ深い悲しみを覚え、父の死でも出なかった涙を流した。彼は柏木との交際も控えるようになり、日に日に無為な生活を送るようになった。

(8)老師の失望

ゆくゆくは溝口を鹿苑寺の跡取りにしようかと考えていた老師は溝口の成績の下降や無断欠席にいよいよ失望し、さらには老師が女遊びをしているところを溝口が目撃し、その後をつけようとした(と老師が思った)1件などもあり、遂に口に出して溝口の跡取りの話が無いことを伝えた。

(9)失意の旅

溝口は老師への不満や失意の中、柏木から借りた金でふっと寺から姿を消し旅に出る。その旅は3日目にして、宿の者の通報により終わった。しかし、その時溝口は金閣寺を燃やすことを決意するのである。それは彼にすれば革命者的な行為であり、旧態依然の象徴的存在であった金閣寺を燃やすことにより、人々に衝撃を与え、価値観を変えようとしたのである。

(10)金閣寺

いざ決めたもののずるずると決行を思い悩む溝口だったが、柏木との会話や老師の救いようのない姿に決行を決意する。折よく金閣寺内の火災報知器が故障したため、その修理が終わる前の夜中に彼は金閣寺に忍び込んだ。彼は金閣寺と共に彼自身や身の回りのものも全て消失させてしまうと金閣寺に運び込んだ。それら全ての作業が終わってしまうと不意に彼の心は満たされた。しかし、彼はその先は惰性のように行うことで遂に金閣寺を火に包むのだった。彼自身は3階の金箔に囲まれた天守に入れなかったことで、死を断念し、金閣寺が望める山へと逃亡する。

3.魅力

美に執着した主人公溝口とそのコンプレックスや歪んだ考えなどが、筆者による美しく精密な文体で描き出されている。魅力としてはその経緯や背景など現実の事件を基にして筆者が見事に描き出した部分であろう。しかし、内容は非常に複雑に論理を巡らされている為に読解に多大な時間を要する物語である。真に理解する為には複数回に及び読む込む必要があるだろう。

 

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