純文学1000本ノック

ただひたすらに純文学の読書感想を並べていきます。

純文学1000本ノック 16/1000 遠藤周作『深い河』 巡礼者たちが見たガンジス河

 

どうも、こんにちは。

トイレットペーパーが普通に家に無くなったので買いに行ったら買い占められてたよ。困っちゃうね。

今回は遠藤周作『深い河』。心にあらゆる傷を持った巡礼者たちがインドへ行き、ガンジス河へ出会う。その川は生も死も、喜びも哀しみも全てを包み込み、流していく・・・。

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 1.読後感

 ガンジス河という深い河に心の全てが包み込まれ、しばらくソファの上で呆然としていた。決して気持ちの良い終わり方では無いし、楽しい気分に本ではないが、1人の人間に1晩考え込ませるような、ゆるやかで大きな力のある本だった。

 

2.ザックリあらすじ

(1)それぞれの理由

物語は磯部という定年を控えた男性の視点から始まる。彼は病気で妻を亡くし、妻の「生まれ変わったわたくしを探して」という最後の言葉を胸にインドへ行くことを決意する。一方、最近凡庸な旦那と離婚した美津子は大学時代に弄んだ他の男と違う大津という男を探しにインドへ向かう。沼田は童話作家として野生の動物たちを見にインドへ。木口は戦友の死をきっかけに戦時中ビルマで死んでいった仲間たちを悼みにインドへ。それぞれの想いを秘めてインドツアーに参加する。

(2)女神チャームンダー

インドに降り立った一行はニューデリーを経由し、バラナシに到着した。ガイドの江波はインド哲学を専攻していた男で、短い観光のみで知った顔をする観光客たちは軽蔑している。彼はガンジス河の観光の前に敢えて道中が厳しく、恐ろしい姿をした女神チャームンダーを見せた。チャームンダーは醜い姿をしながら苦しみを一手に引き受け、それでもなお萎びた乳を子供たちに与えている。

(3)ガンジス河

それぞれがそれぞれの想いを抱えながら、ガンジス河を見る。ガンジス河はヒンズー教の聖にして母なる河であり、多くの教徒たちが汽車や車、貧しい者は徒歩で集まってくる。彼ら巡礼者たちはそこに死ぬために集まってくる。その河では火葬された死体の灰が流されている横で洗濯や沐浴をしている人たちがいる。

(4)大津

大津は学生時代美津子に弄ばれたときの心の傷から神の元に行き、神父になった。しかし、彼はヨーロッパの論理的なキリスト教に馴染めず、ズルズルと放浪し、遂にはバラナシでヒンズー教の人々に混じり、路上で死んだ巡礼者の遺体をガンジス河まで運んでいる。その遺体や火葬は神聖なものであり、撮影を禁止されているが心無い日本人がそれを撮影し逃走した。それを怖ろしい勢いで追いかけるインド人たちを大津はなだめようとするが、暴行され危篤になってしまう。

 

3.魅力

物語の構成と、タイトルの通りガンジス河という深い河の2点の魅力がこの本の真髄であるとと思う。それぞれが巡礼者としてそれぞれの想いを秘めて日本から旅立つ。それぞれ全く違う想いだったにも関わらず、ガンジス河という、生も死も、喜びも哀しみも、全てを包み込む河の前では、同様に流されていく。そのミクロの視点からマクロの視点へ変わっていく様は、ある一種の普遍的な真理のように読む者の心を揺り動かしていく。

 

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