純文学1000本ノック

ただひたすらに純文学の読書感想を並べていきます。

純文学1000本ノック 14/1000 ヘルマン・ヘッセ『車輪の下』 小児教育の光と闇

どうも、こんにちは。

昨日見た『キャッチミー・イフ・ユー・キャン』に大分感化されましたポカンです。

今回はノーベル文学賞作家のヘルマン・ヘッセ車輪の下』。いや、描写がとにかく多い。そして、ここがフランスとドイツの差なのか、フランスが力の抜けた洒落具合に対し、ズブズブにこってり系の書き口でした。

 

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 1.読後感

自分自身の少年時代を懐かしみつつ、最後は物哀しさを感じながら本を閉じた。あの夏の色や初恋の高揚、そして苦々しさ。それから教育への反発心。それらが、ハンスという内気で素直な天才少年を通して目の裏に浮かんで来た。

 

2.ザックリあらすじ

(1)州試験

自然豊かな田舎町に生まれた内気で素直な天才少年ハンスは、他の生徒とは明らかに異質な賢さで周囲の大きな期待を背負い神学校の州試験の準備を進めている。近代的で偉い牧師から、校長先生、数学の家庭教師といった人々は熱心に彼を指導し、彼も次第に今まで熱中していた遊びや釣りを止め、勉強に勤しむようになる。大きな不安と共に終わった州試験だったが、結果は36人中2位合格と大変優秀なものだった。

(2)神学校での生活の始まり

入学まで7週間の休みが出来たハンスは幼いころ熱中していた釣りなどを再び行う。しかし、彼の視線は既に神学校でのトップにあり、靴屋のフライク親方(ハンスの少年期が勉強だらけなのを憂慮している)の助言も聞かず、勉学の道に邁進していく。学校に入ると個性的な面々と出会うが、ハンスは友情よりも勉強を優先的に進め、見事に上位をキープする。

(3)ハイルナーとの友情

毎日夕方は勉強していたハンスだが、ある日、散歩をしていると、詩を愛し学校を軽蔑し勉強は要領よく済ませ、自分とは正反対の性質を持つハイルナーと2人きりになる。2人は不思議と縁があり、次第に無二の友になっていく。

(4)ハンスとハイルナー

1度、問題を起こし停学になったハイルナーに挨拶にも行かず、仲が途切れたふたりだが、ハンスの謝罪により以前にも増した深い友情で結びつくこととなる。それと共に次第にハンスは勉強が疎かになり、先生方からの信頼も失っていく。そして、ハイルナーは再び問題を起こし、学校への謝罪も拒否したことで放校されてしまう。

(5)孤独なハンス

ハイルナーという唯一無二の友人を失ったハンスはこの頃には成績も非常に悪化し、学校からも見放された存在となっていた。彼は授業中もボーっと過ごし、先生から指摘されても曖昧な微笑みを浮かべるようになる。彼はある日、遂に精神に異常をきたし、実家で療養することとなる。

(6)死への欲望

失意のうちに帰省したハンスは、父の心配の裏にある憤りや失望等も感じ取り、無為に毎日を過ごす。精神状態も一向に良くならぬまま、彼は自殺することを考えるようになる。

(7)初恋

相変わらず無気力な生活を送っていたハンスだが、町がリンゴ収穫の季節となり、靴屋のフライク親方の家に顔を出すと、そこに初恋の人エンマ(フライク親方の姪で隣町に住んでいる)がいた。彼女は明るく美しく、ハンスの心は奪われる。彼は彼女を尋ね、彼女の手ほどきを受けながら初恋の味を夢中になって堪能する。

(8)生死

恋に夢中になり、死ぬことをやめたハンスだが、エンマにとっては真剣な恋でなくすぐに実家に帰ってしまい、苦々しい気持ちを味わう。やがて、父の勧めにより機械工の見習いとして働き出すが、勤めて最初の週に機械工の仲間と飲み歩き、冷たい川に落ちて帰らぬ人となってしまう。

 

3.魅力と批評

 全体としての魅力はやはり濃厚な心理描写だろうか。基本的にはヘッセの自伝のようなものである。なので大きなテーマとして、学校や幼少期の勉強至上主義への批判があるが、少年の友情や恋愛など様々な要素が複合的に絡み合っている。『車輪の下』は最も読まれたヘッセの長編だが、本国ドイツでは8位だそうだ。たしかに、文章全体としては意味の大きくない(後にあまり意味を持たない)文が数多くあり、創作としては秀逸と言い切れない部分が内包されている。しかし、現代日本における「お受験」などに強く通ずるものもあり、一読する価値は十分にあるだろう。

 

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