純文学1000本ノック

ただひたすらに純文学の読書感想を並べていきます。

純文学1000本ノック 15/1000 谷崎潤一郎『卍』 繰り返される愛憎の果て

どうも、こんにちは。

コロナ・ウイルスもいよいよ蔓延してきた感じだね。いつかかってもいいように、みんなも日ごろから免疫つけておこうね。

今回は谷崎潤一郎『卍』。初谷崎潤一郎だったけど、その独特の文体といやらしいまでに綿密に描かれた愛憎の動きに目が離せない小説だったね。

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 1.読後感

 語り手である柿内夫人(園子)と共に彼女の思い出の中を一緒になって走り抜けたような、奇妙な息苦しさと僅かながらの爽快感を同時に感じた。大阪弁で繰り返される彼女の告白に徐々に惹きつけられて途中からはページを捲る指が止まらなくなった。幾層にも重なった策略は理解するまでに時間がかかったが、ミステリーのような味もある。

 

2.ザックリあらすじ

(1)光子との出会い

園子は優しい夫に甘え、以前不倫をしていたが、そのことは反省し、家にずっといるのも良くないと思い絵の学校へ通うことにした。夫もそれには大いに賛成してくれた。そこで生徒の光子という美しい女性を見つけ、人知れず憧れを抱くようになった。

(2)光子との接触

園子は光子を想うあまり、モデル絵でモデルの顔を描かずに光子の顔を描いた。それを見た校長先生は、ある者の頼みから光子の弱みを探していた為、この2人が同性愛関係である、という噂を流した。園子はそんな噂が流れ、光子に申し訳なく思っていたが、ある日光子から近づいてきて園子に感謝してると言う。話を聞くと光子は縁談を進められているが、元々気乗りしないため却って都合がいいとのことだった。

(3)園子と光子

ふたりはその1件以来、親しくなり一緒に遊ぶようになる。ある日、園子の家へ光子を呼ぶと光子の裸を見せてもらった園子は猛烈に光子を求める。光子もそれを受け入れ、いつの間にか同性愛の噂は現実のものとなっていく。

(4)夫との確執

園子の夫はふたりの関係に違和感を感じ(光子が園子のことを姉ちゃんと呼ぶ)、話し合いをするが、園子は強情で全く認めようとしない。夫はそのうち諦めたように静かになる。園子は図に乗り、自宅で堂々と光子と会うようになっていく。

(5)綿貫の存在

ある日光子が、以前お揃いで仕立てた着物を至急届けてほしい、と園子に連絡をしてくる。何でも彼女は博打打ちも使う宿屋にいて、警察の御用があり部屋から姿を隠した間に着物が盗まれてしまったという。園子は背後に男の存在を感じ、混乱しながらも光子のあまりの慌てぶりに焦り、着物を届けに行く。行った先には綿貫という中性的な男がいて、光子は恥ずかしくて出てこれないので、と彼から園子へ事情を話される。園子は光子に対して裏切られていた怒りを感じ、帰宅する。

(6)失意の園子

光子と金輪際会わないようにしよう、と決めた園子は夫に今までのことを正直にすべて白状した。優しい夫は話してくれたことに感謝し、夫婦は久しぶりの円満な生活を取り戻す。園子は光子を思い出さないように手紙などが来ても破棄するように女中に言いつけ、夫を想うことで光子を忘れようと努める。

(7)光子の陰謀

光子の陰謀により、光子と会うことを余儀なくされた園子は、光子に会うと抑えようのない愛情が溢れてきた。途中から光子に騙されていると感じつつも、そのままふたりは元の関係に戻ってしまった。園子は夫に内緒で再び光子のところで足繁く通うようになる。

(8)綿貫の陰謀

性機能を持たない綿貫は光子と園子の仲に嫉妬し、ふたりを引き裂こうと躍起になる。遂には園子の夫の所へ乗り込んでしまう。園子の夫は妻を問い詰め、金輪際光子に会わない、という約束を取り付ける。

(9)脱走と園子の陰謀

光子に恋い焦がれる園子は夫の目を盗み、光子と共に彼女の別荘へ脱走する。そして、そこで自殺未遂を起こし夫に迎えに来てもらい、ふたりの関係を強引に納得させる陰謀を図る。それは見事に成功したが、小悪魔的な光子は薬の昏睡から先に目覚めると園子の夫と寝てしまう。

 (10)卍

園子と元々性の相性が良くなく、経験も少ない夫は瞬く間に光子の虜となってしまう。夫は園子にそのことを白状し、妻と共に光子を愛する、という異常な関係が結ばれる。光子はふたりの熱情を試すように毎晩睡眠薬を飲ませたり、無理な要求を聞かせるようになる。園子と夫は次第に疲弊し、光子の為に死んでもいい、と思うようになる。そんなある日、新聞にて光子や園子の関係が綿貫により洗いざらいすっぱ抜かれてしまう。光子は絶望し、3人で自殺を図る。

 

3.魅力

愛と愛憎の醜くも美しい様がネットリと濃厚に描き出されている。知略を尽くしたそれぞれの謀はミステリーのように心躍らされるものである。また、全体を通して大阪弁の会話文で描き切られた様子はまさに異様で見事なものである。

 

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