純文学1000本ノック

ただひたすらに純文学の読書感想を並べていきます。

純文学1000本ノック 13/1000 J.D.サリンジャー『フラニーとズーイ』 エゴ(社会)への嫌気と解放

どうも、こんにちは。

人生2度目のぎっくり腰をやってしまって眠るのも辛い日々を送ってるよ。

 

今回は『ライ麦畑でつかまえて』で有名なさリンジャーの『フラニーとズーイ』を読んだよ。こちらももちろん有名な作品ではあるのだけど・・・前作で相当衝撃を受けた僕はそれを裏切るほどのパンチを鼻っ面に浴びたような気分だね。

 

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 1.読後感

初めは、疲れた、というのが正直なところだった。徐々に内容を頭の中で反芻し理解が深まり、さらに村上春樹訳版(著者が禁じた解説のようなものが付録の形でついている)だったおかげもあって、そこからこの本の味のようなものが染み出していくのは心地よかった。ただ、やっぱり僕のような浅い読者にはとてつもない疲労感が初めに来たのが正直なところだ。

 

2.ザックリあらすじ

この物語は『フラニー』と『ズーイ』という2つの小説からなっているが、便宜上地続きであらすじを書いていく。

(1)フラニーとレーン

レーンはフラニーとのデートを楽しみにしているアイビーリーグハーバード大学などの名門私立校の集まりの俗称、日本では早慶か)に所属するインテリの文学青年である。いざフラニーと会うと彼女は異常なまでに思い詰めている。インテリ学生に人気のバーに2人で行くが、彼女は彼や世間に対し手厳しく批判し、あまりの体調の悪さから失神してしまう。

(2)バディー

バディーはフラニー含むグラス家の次男である。『ズーイ』の物語はバディーの視点で書かれたものと最初に断られている。彼ら兄弟はみな、幼い時に神童としてラジオ番組(クイズ番組のようなもの)に出ていた。それぞれがそれぞれの暮らしをしているが、長男のシーモアは数年前に自殺してしまっている。

(3)ズーイと母

ズーイは7人兄弟の中の下から2番目(フラニーの次)で現在25歳でその容姿もあり売れっ子テレビ俳優をしている。彼は母から最も年の近い兄弟として今回のフラニーの騒動を助けられないか相談されている。彼は自分の入ってるバスルームに入ってくる母をけなしたり、脈絡のないことを言って母を困らせるが、実際にフラニーを心配している。

(4)フラニーとズーイ

ズーイは上2人の兄弟(長男シーモアと次男バディー)によってフラニーと彼は一種の英才教育(西洋哲学や東洋哲学等さまざまな)を受けた影響で今回の騒動のようなことが起きていると考えている。そしてそれを批判しつつも、フラニーを救い出すために彼女と対話を始める。

(5)フラニーとズーイ

ラニーはズーイに今回の原因が人々や自分自身も含めたエゴが嫌になってしまったこと、それを解決?する為、ある本(シーモアとバディーに与えられた)に出てくる祈りを常に口ずさむという方法を実践しているということが明らかになる。ズーイは彼女へ自分の昨晩の話や考えなどをまくしたてる(これが本作のメイン)。

(6)フラニーとズーイ

ズーイはフラニーがその宗教的手法でやっていることを止めるつもりは無いが、何も価値のないことだと言う。それは一種の甘え(家族や恋人にわざわざ心配をかけるような場所でやることなど)でやるのであれば自分1人でやればいいと言う。フラニーは泣き崩れる。

(7)フラニーとズーイ

ズーイは兄たちの部屋から母の部屋にある固定電話へ電話をかける。そこでバディーに扮しフラニーと話す。それは途中で彼女に気付かれてしまうが、ズーイは問題の根本は人々のエゴなどでは無く(多くの人はエゴだけで動いている訳では無い)、彼女自身だと気づかせる。そして、社会の人々やその反応(フラニーは演劇をしている)を受け入れる必要があることを伝える。彼女はその話でようやく落ち着き、嫌な夢を見ない深い眠りにつく。

 

3.魅力と読みにくさ

魅力は訳者村上春樹によれば、その文体である。ライ麦では一人称だったものが、徹底的な三人称を持ってして独特の素晴らしいリズムを文体に仕上げられているとのことだ。それから、このストーリー(世間から遠ざかっていたサリンジャー自身が世間へと向き合うべきというオチ)はライ麦の世間から離れる、と対極をなすものとして機能し、美しいハーモニーを奏でている。しかし、読みにくさについて(読後感にも疲労と書いた)は圧倒的な哲学や宗教、文学その他が凝縮されていること(特に宗教色が強い)である。なので、訳者も述べているが、若いころと年を経てからでは味わいが変わるのだそうだ。私もその味をしっかりと味わえる人間へとなりたいものである。

 

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