純文学1000本ノック

ただひたすらに純文学の読書感想を並べていきます。

純文学1000本ノック 9/1000 芥川龍之介『地獄変』 芸術と人間

 

どうも、こんにちは。

遂にコロナウイルスさんが国内で感染確認(中国との関係なく)されたね。実はこれ大分前から起きていた事態で厚労省がパニックにならないように検査を拒否し続けただけだと思う今日この頃。

 

さて、今回は 芥川龍之介の『地獄変』を読んでみたよ。日本における文学賞の最高峰として名高い作者の名がついた芥川賞、その芥川龍之介の代表作としても名高い『地獄変』、いい読書ができたよ。

 

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 1.読後感

 

読後はただひたすらに登場人物たちのことを想い、哀しく空しく乾いた空を見上げているような気分になった。芥川龍之介は文庫本の吉田精一の解説にもある通り、今作を芸術と道徳という2点の相克から描き出したそうだ。たしかに気ちがいじみた画家とその絵師の唯一の人間としての愛が感じられる娘、その2つが相克する物語になっている。

 

2.ザックリあらすじ

 

(1)大殿様

物語は大殿様に仕える人物の視点で描き出されていく。大殿様はとにかく大人物なようで、数々の逸話を残している。その中でも、今日重宝となった地獄変という屏風絵ができた由来は大変な出来事だった。彼はその回想を始める。

(2)絵師良秀

良秀は大殿様お抱えの高名な絵師であったが、その性格などは大変卑しく、大殿様の邸の中で彼のことを好きなものはいなかったそうだ。しかし、女中として邸に仕えていた良秀の娘は彼と似ても似つかない気立ての良い娘で、邸中の人から愛されていた。良秀も娘を大変愛し、邸の仕えから自分の元に戻すよう大殿様に何度かお願いしている(大殿様はこれを却下している)。

(3)猿

良秀は以前からその所作から猿と揶揄されていた。偶然献上された小猿に若殿様が良秀という名を付けていじめるようになった。邸の人々も喜び、この猿をいたぶった。ある時、その猿の逃げ惑う様を哀れに思った良秀の娘が若殿様に猿の命乞いをした。それから娘と猿は片時も離れぬようになり、猿も邸の中で可愛がられる存在となった。

(4)地獄変

猿は可愛がられ出したが、相変わらず嫌われ者の良秀は大殿様の依頼で地獄変の屏風制作に取り組むこととなる。秋のはじめから冬の終わりまで気ちがいのように熱心に描き続け、ようやくほぼ完成というところで、1つの問題が起こる。

(5)描けないシーンの再現

良秀は高貴な牛車の中で貴婦人が燃える姿を描こうとしているが、目に見ていないものは描けないので、何とか用意してもらえないかと大殿様に依頼する。大殿様は絵の為に人命すら厭わない良秀を懲らしめようとそれを承諾する。

(6)芸術家としての完成、人間としての終わり

ある晩、遂にその再現が実行されるが、牛車の中にいたのは良秀の愛娘であった。火がともされる中、思わず良秀は立ち上がる。周囲の者は唖然とし、大殿様のみがその光景を嘲笑している。しかし、良秀はその様子をしっかりと目に焼き付け、遂に地獄変を完成させる。これは大変な出来栄えで良秀のことを嫌っている者たちも認めざるを得なかった。人間としての良秀は娘の後を追うように自殺する。

 

3.評

地獄変の評価が非常に高いのはその出来栄えというのは勿論のこと、『今昔物語』などから材料を取ってきた芥川龍之介の作品の中で、特に創作の側面が強くオリジナリティがあったことも大きいだろう(地獄変は『宇治拾遺物語』を基にしている)。そして、芥川龍之介の中での芸術と道徳という2つの相克するテーマがここに込められているのである。なお、文庫本には他に『偸盗』や『薮の中』なども入っている。『偸盗』は芥川龍之介自身の評価は低いようだが、現代にも通ずるドラマ性と心理描写が多く、芥川龍之介作品の中で現代人の最も楽しめる作品の1つと言えるだろう。

 

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