サン・テグジュペリ『夜間飛行』 一人の幸福より崇高な職人の有り様 純文学1000本ノック27/1000
どうも、こんにちは。
今回は、『星の王子さま』で今なお有名なサン・テグジュペリのもう一つの代表作『夜間飛行』。僕も、サン・テグジュペリは『星の王子さま』しか読んでいなかったので、この作風の落差にはたまげたよ。
1.読後感
最初は堅苦しいと思っていた主人公リヴィエールの、職人気質が、もはや突き抜けてかっこよく見えてきた。結末はハッピーエンドでは無いので、長かった夜が終わり、重い悲しさも伴うが、同時に信念を貫く彼の姿に、個人より大きな力を見ずにはいられない。
2.ザックリあらすじ
(1)ブエノスアイレスへ集まる郵便機
夜に、パタゴニア、チリ、パラグアイから、それぞれ郵便物を積んだ飛行機がブエノスアイレスへと向かっている。物語はある一夜を舞台に進行していく。
(2)リヴィエール
ブエノスアイレスの飛行場支配人であるリヴィエールは、職人気質を持ち、素晴らしい操縦士を育ててきたが、自分が老いてきたことを感じ、今まで顧みなかった個人としての感情や幸福が頭を掠める。
(3)ロビノー
飛行場の監督であるロビノーは、リヴィエールの指示に従い、厳しい規律も厳格に守らせてきた。しかし、非人間的な彼の仕事は彼に思い悩ませることも多く、部下の操縦士のペルランに彼は心の悩みを打ち明ける。リヴィエールはその2人の関係を知り、ロビノーにペルランを処罰するよう命令する。
(4)信念
リヴィエールは膨大な書類に目を通し、厳しく処罰を下していく。それには、彼の信念があり、彼は人命のかかわる航空便の大事業においては、過誤の芽を取り除くのことこそ自分の職務であると考えていた。故に彼は私的な感情の一切を排除し、処罰を進めるのだった。
(5)パタゴニア機
パタゴニア機は暴風にやられ、視界も無いまま、現在地も不明になってしまう。いつしか、そのガソリンも半時間分しかなくなる。地上部隊は懸命に通信を試みるが、やがてその通信も途絶える。パタゴニア機の操縦士ファビアンの妻が飛行場を訪れ、リヴィエールに自らの感情を訴える。リヴィエールの心は一時的に揺れるが、パタゴニア機からの通信が完全に途絶えた後も、彼は信念をブラさずに職務を全うする。
3.魅力
『星の王子さま』もそうだったが、僕はこの作者のテンポにいつも惑わされる。読むのに、恐ろしく時間がかかるかと思えば、軽快に進んでいく部分もある。単純な相性の部分もあるだろうが、彼の持つ実体に基づいた重厚さが、ページを捲る指と、読み進める目を止めてしまうように思う。しかし、今作では『星の王子さま』とは違い、大人の仕事人の覚悟や信念が伝わってくる。これは、日本の働く世代には大いに共感を得られるものだと思う。
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