純文学1000本ノック 2/1000 カミュ『異邦人』 ムルソーには異邦人たる自覚はあったのか。
どうも、こんにちは。
1.読後感
ぬるぬるとした感じだね。もちろん最後の解説まで読んだわけだけど、彼はなぜ頑なに「嘘をつくこと」や「演じること」を選ばなかったんだろうという疑問は消えぬまま、舞台となったアルジェリアの永い夏の海風を想像し、身体から力が抜けてしまうような感覚が残った。
2.ザックリあらすじ
ムルソーは20代半ばほど(だと思う)で海運会社に勤める青年、寡黙で淡々とした性格で、他者やその物事に深く興味を深く示さない。しかし、欲望(空腹・性欲)などには非常に正直な面がある。
(1)愛するママンの死
彼の老人ホームにいた愛する母(ママン)が死んでしまう。葬儀を行うが、彼は感慨深い態度を見せるでもなく、ただ冷静に処理をする(心の奥ではもちろん悲しみを感じている)。
(2)周囲の人との関わり
恋仲となるマリイに対して、欲情し親密な関係にはなったが、「愛している?」の質問に「それには何の意味も無いが、恐らくは君を愛していないだろう」と正直に答える。しかし、結婚を求められると、それは受け入れるという。友人となるレイモンには、彼の依頼で彼の元カノへの復讐を手伝ったところから、彼の方からアプローチされ、友人となる。
(3)事件
遊びに行った浜辺でレイモンの元カノの兄と仲間がレイモンを執拗に付け回し、一触即発になる。1度は収まったものの、一人で浜辺を歩いていたムルソーは元カノの兄と再び遭遇し、レイモンの拳銃で撃ち殺してしまう。
(4)獄中
投獄されたムルソーは暇つぶしの方法に苦慮する。色々なことを思案するが、結局は追憶することが一番の暇つぶしだと悟る。彼は弁護士などと会っても、自分の有利になるように話すようなことはせず、事実と自分のありのままの素直なところを話し続ける。
(5)裁判
いよいよ裁判を迎えるが、彼が正直に全てを話していたことで、母の死で何も感じていないようにふるまっていたことなども弾劾され、彼は死罪となってしまう。
(6)最後
彼は死を受け入れることを身に着ける。それは神にすがるのでもなく、ただ無になることを受け入れるだけだった。神父が尋ねてきて、彼に神を信じ、祈らせようとするが、彼は最後までそれを受け入れることは無い。
3.感想
ムルソーには異邦人、つまり異なる国の者として扱われてしまう、という自覚は合ったと思う。なぜなら、彼はインテリ(作中で使われている)であり、レイモンの喧嘩別れした元カノを呼び出すときに巧みな手紙で彼女を呼び出してしまうくらい人の感情を理解できるのだ。そこで、なぜ彼は最後まで「嘘をつくこと」「演じること」を受け入れなかったのか。現代で言うと、非常に不器用な生き方なのである。だが、彼は真理を曲げること、それだけはプライドを持って、することができなかったのである。それが、作中の裁判の証人喚問で出てきたセレストのセリフにも表れている。「彼は男だ」「・・・それが意味することは誰でも知っている」
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