純文学1000本ノック

ただひたすらに純文学の読書感想を並べていきます。

純文学1000本ノック 114/1000 トルストイ『クロイツェル・ソナタ』

どうも、こんにちは。

 

今回はロシアの文豪トルストイの性を描いた中編作品『クロイツェル・ソナタ』です。トルストイは道徳的な作品の『人はなんで生きるか』しか読んだことがなかったので、テーマの違いにおどろきました。

 

1.ざっくりあらすじ

二昼夜におよぶ列車旅行をしていた主人公は、車内で思いがけぬ愛や結婚についての論争に出会いそれに参加する。論争は結婚観の古い老人が出ていくことで収まりかけるが、ポズドヌイシェフという紳士により、蒸し返される。彼が妻を殺害したことを告白し周りの人は離れていくが、隣の席だった主人公は彼からどうして妻を殺すに至ったのか、肉欲と愛と憎しみに満ちた告白を聞く。

 

2.作品解剖

 

(1)文体★★☆

現代でいうキャラクター化が上手くなされ、それぞれの特徴や感覚をとられた表現が随所にみられる。作品のほとんどはポズドヌイシェフの語りによって進行する。

(2)構成★★☆

現代におけるエンタメ的な結論を引き伸ばす効果を使い、ポズドヌイシェフの告白がどんどん真剣さを帯びてくる。

(3)論理★★☆

ポズドヌイシェフは長大すぎる異常な語りを展開するが、彼は最初から妻を殺した精神疾患風の男であることからリアリティは欠如しない。

(4)テーマ★★★

夫婦間における『愛』を冷酷なまで徹底的に男性の肉体の欲望に基づいて描いてる。いつの時代にも通用しそうな真理のカケラが詰まっているように思う。

 

3.感想

ドストエフスキーといい、ロシア文学は語りによる昂揚感を最大限に利用していると思った。それにより感情の細かな部分まで掬って捉えている。個人的には『人はなんで生きるか』からの愛の変遷を知りたくなった。