純文学1000本ノック 67/1000 ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』
どうも、こんにちは。
今回はロシア出身の世界的文豪ドストエフスキーの晩年の代表作『カラマーゾフの兄弟』です。昔一度『罪と罰』で挫折して以来とっつきにくかった作者に再び挑戦してみました。
1.ざっくりあらすじ
父フョードル、長男ドミートリイ、次男イワン、三男アレクセイからなるカラマーゾフ家の事件を題材にした本作。金と色欲に溺れた父は、息子たちを放っておき、やがて人に引き取られていったが、長男の帰宅を機にみんなが同じ町に揃う。父と長男の金銭問題と恋愛問題がロシア全土を賑わす『父殺し』の事件まで発展する。長男は無実だったが、有罪が確定し、次男により脱走計画が企てられる。
2.作品解剖
(1)文体★★☆
作者目線の三人称を用いた非常にセリフの多い饒舌な文体である。それゆえに個々人の性格や思想がありありと描き出されている。三人称ではあるが、登場人物の感情まで描き出す一種神的視点の部分もある。しかし、それらは描き方のうまさから違和感なく進んでいく。
(2)構成★★★
冒頭の段階から先の出来事を匂わせる作者の語りが入ってくる。これだけの枚数(空白を含めて原稿用紙換算するとおおざっぱに三千枚近くなる)を事件まで数多くの伏線を含めて仕上げたのは尋常でないことがわかる。
(3)論理★★★
十九世紀ということもあるが、やはり事件の調査に関してはいささか腑に落ちない点が多いと思う。しかし、感情の論理、思考の論理という点に関しては、現代の小説に類を見ない深遠な部分まで描き出されていると思う。
(4)テーマ★★★
『神の実在性』『良心』『愛』その他にも現代まで通ずる様々な人間の根本的問題がテーマとして出てくる。直接的な対話を増やすことで、そのテーマを徹底的に掘り下げていったことは、ある意味非常にわかりやすく、難しい哲学書を読むより勉強になりそうである。
3.総合評価と感想
総合★★★★★
間違いなく近代文学の代表作品だろう。人間の本性を実に的確な感性で表現していると思った。ある意味、人生の教科書になりうる書物でもあると思うが、一時間に百ページ読んでも二十時間近くかかる。二時間に百ページだとその倍である。一週間ほど時間のあるときにゆっくり読んでほしい作品である。