純文学1000本ノック 64/1000 遠野遥『改良』
どうも、こんにちは。
今回は遠野遥の『改良』です。2019年文藝賞を受賞した本作。その後、作者は『破局』で芥川賞を受賞しています。
1.ざっくりあらすじ
美しいものに憧れ、女装をする大学生の主人公は、女性への性欲をデリバリーヘルス嬢で満たしながらも、過去に同級生の男の子からレイプまがいのことをされたため、そういった男性へ嫌悪感を持っている。主人公の思う女装は完成していき、周囲に見せるが思っていたのとは違う反応が返ってくる。
2.作品解剖
(1)導入★★☆
‟小学生の頃、一年間ほどスイミングスクールに通っていた時期があった。”からはじまる本作。退屈なはじまりに思えたが、どぎついエピソードと、不感症的な主人公に徐々に感情移入しはじめていた。
(2)描写★★☆
内面描写を中心に平易な文体で描かれている。
(3)内面★★☆
どこか冷めた主人公の内面を入念に描き出している。
(4)文体★★☆
わかりやすく飽きの来ない平易な文体で描かれている。
(5)構成★★☆
短い作品だが綺麗にまとめられている。上に住む男の件などは一読しただけでは理解できず、不完全燃焼感はあった。
(6)論理★★☆
大きな論理的矛盾点はない。
(7)テーマ★★☆
一言では言い表せない『性』に対する複雑な想いを描いたものだと思う。
3.総合評価と感想
総合★★★☆☆
話も面白く、するすると読まされていく文章。クライマックスにかけて盛り上がっていく部分も作品としてうまい。ただ、どこか表層をなめるような雰囲気が最後まで続いていた。