純文学1000本ノック 98/1000 澤西祐典『フラミンゴの村』
どうも、こんにちは。
今回は2011年にすばる文学賞を受賞した『フラミンゴの村』です。
1.ざっくりあらすじ
ベルギーのある村で、妻や女性たちが突如としてフラミンゴになってしまう。そういった不条理にあいながらも、村の男たちは団結して秘密を守って生活をしていく。幾多の困難にあいながら最終的に、フラミンゴを殺そうという派閥と守ろうとする派閥にわかれて抗争がはじまる。武力抗争のさなか、リター少年がフラミンゴたちのところに駆けてゆき、それを合図としてフラミンゴたちは空に飛び立つ。
2.作品解剖
(1)文体★★☆
古い海外小説のように語り手が饒舌な三人称である。村のアダンという人物を中心として物語は進んでいく。文体は古めかしいが舞台設定と調和して違和感なく、単語選びは標準的である。
(2)構成★★☆
物語の要素がつよい本作では重要な部分だと思われる。事件の発端からクライマックスまで現実的な問題も拾い上げながら滞りなく進んでゆく。思わせぶりな伏線の数々が最後に力を発揮しきったとまではいかないかもしれない。
(3)論理★★☆
フラミンゴになること、フラミンゴが飛び立って散っていくこと、は大きな飛躍をうまくしているが、それ以外は現実の法則に即して進んでゆく。群像劇なので仕方ないが、深みのありそうなキャラクターがパドゥ以外に見られなかったのがもったいない気がする。
(4)テーマ★★☆
不条理な状況に陥った人々を大枠でとらえて、なにか象徴としたものを表現しようとしていたのかと思ったが、一読では読み取れなかった。
3.総合評価と感想
総合★★★☆☆
物語の要素がつよいので、小説としておもしろく読める。同じような不条理の状況を徹底して描いたものにカフカの『変身』があるが、それを見つめる対象を家族のみでなく村としたことが、面白い試みだったが、焦点が定まりにくくなってしまった原因かもしれない。個人的にパドゥの行動原理などは表現してほしかったと思った。