純文学1000本ノック 99/1000 髙橋陽子『黄金の庭』
どうも、こんにちは。
今回はすばる文学賞を受賞した髙橋陽子の『黄金の庭』です。
1.ざっくりあらすじ
ファンタジーの世界に近い黄金町に引っ越してきた青奈と旦那の那津男。屋根の両脇についたしゃちほこが動いたり、お寺にまつられた閻魔様が動いたりする世界で、失業中だった主人公の青奈は市場に行き露店商をする千ちゃんという四十男から仕事を紹介される。青菜はしだいに千ちゃんに惹かれていくが、最後まで関係をもつことなく、千ちゃんは恋人のダイヤさんが妊娠し、結婚を決意する。
2.作品解剖
(1)文体★★☆
一人称で、直接的なひとりごとを地の文に多用している。比率としては描写などよりひとりごとや考えごとがおおい。非日常的な世界が日常のすぐ隣にある感覚はおもしろい。
(2)構成★★☆
失業した女性があたらしい町で職をみつけ、恋をして、不倫はせず日常にもどっていくという構成。なんでもない日常が描かれているが、世界観ゆえに奇妙な心地よさのある作品となっている。オパールの指輪や大黒屋の店主など魅力的でもっと有効に使えそうな部分はおおかった。
(3)論理★★☆
とくに矛盾する点はない。非日常世界のなかではあるが、日常はそのまま機能している。
(4)テーマ★★☆
テーマは主人公のそのときどきの着想にもとづいてゆれうごき、全体としては霧散している印象。大きなものとして、村社会であったり、ある美しい瞬間であったり、日常のいとおしさだったりするような気がした。
3.総合評価と感想
総合★★★☆☆
全体を通し、いとおしい日常の作品として好感をもった。多和田葉子ふうの一つひとつがながい文体やファンタジー性を有しつつも、語と語の関係性のおもしろみや飛躍の部分でそこまでは達しきれていないような印象をうけた。また、個人的には主人公のモテてしまうけれどそれを喜びつつもなんでもないふうを装う感じが嫌味っぽくうつってしまった。