純文学1000本ノック 85/1000 吉行淳之介『驟雨』
どうも、こんにちは。
今回は吉行淳之介の『驟雨』です。1954年に芥川賞を受賞した短編小説です。
1.ざっくりあらすじ
サラリーマンをしながら、しばらく結婚の意志はなく娼婦通いをする山村英夫という主人公が、道子という娼婦に惹きつけられ複雑な感情をいだくまでを追った作品。
2.作品解剖
(1)文体★★☆
三人称と三人称の形をして主人公の一人称的な部分が混じった文体。隠喩や言葉の細やかな表現がうまい。感情の機微がわかりやすくうまい。
(2)構成★★☆
おおむね時系列に沿う形で、出会いの回想などがところどころ入る。作品が短いため、短いシーンで次の展開に飛ぶことが多い。
(3)論理★★☆
特に矛盾点はない。
(4)テーマ★★★
愛情をもった男女間における感情だと思った。感情の細かやかさで作者の感性の鋭さがわかる。短い分、テーマに対してストレートな表現がなされている。
3.総合評価と感想
総合★★★★☆
平均して見たとき、現代の芥川賞受賞作より短いが、その分焦点は絞られており、深みを出すのに成功している気がした。初期作品のためか文体はまだ未完成な印象を受ける。