純文学1000本ノック

ただひたすらに純文学の読書感想を並べていきます。

純文学1000本ノック 84/1000 アルベール・カミュ『異邦人』

どうも、こんにちは。

 

今回はアルベール・カミュの『異邦人』です。ノーベル文学賞を受賞した作者のデビュー作です。昔一度読んで、最近もう一度読みました。

 

1.ざっくりあらすじ

 

主人公の私の母の死から始まる物語。私は、葬儀に行った翌日に海水浴に行き、以前同じ職場で働いていたマリイと会い、映画を観て身体の関係を持つ。その後、隣人のレエモンがアラビア人ともめごとを起こしているのを知り、言われるがままに協力する。レエモンの誘いでマリイも連れてレエモンの友人の海辺の別荘に行き、ついてきたアラビア人たちとひと悶着ある。私はもめごとのあとに一人で海辺を散歩し、ふたたび出会ったアラビア人を撃ち殺す。はじめ簡単かと思われた裁判が進むごとに私は不利な状況に追い込まれる。最終的には、私が母の葬儀の翌日に遊んでいたことなどが不利に働き、死刑を宣告される。

 

2.作品解剖

(1)文体

あまり装飾の多くない文体。感情や欲望にたいする短文を多く使い、主人公の世間とのずれをうまく表している。

(2)構成

おおむね時系列に沿って進められている。部分的に語り的な回想を用いてすこし前の事象を説明している個所がある。

(3)論理

特に矛盾点はない。殺害理由や死刑にいたる裁判模様など、難しい部分をあまり疑問なく進められている。

(4)テーマ

不条理、世間や常識からずれた人間について描かれている。

 

3.感想

数年前に読んで、ひどく感動したのを覚えている。今回読むと、同じように世間のずれと自分のなかでの潔癖性で生きにくい部分には共感したが、理解できない部分を多く感じた。とくに後半にある主人公のひとりで思索にふける部分がわからなかった。カミュの哲学的著作である「シーシュポスの神話」は「異邦人」の解説的役割もあるそうなので、読んでみたい。