純文学1000本ノック 109/1000 山岡ミヤ『光点』
どうも、こんにちは。
今回はすばる文学賞を受賞した山岡ミヤの『光点』です。
1.ざっくりあらすじ
主人公の実以子は、工場しか就職口がないような田舎町に住み、中学を卒業して食品加工工場で働いている。母は父を溺愛し、主人公には厳しい。父は不倫している。ある日、主人公は神社でカムトという青年に声をかけられ、次第に二人で過ごすようになる。カムトは主人公に妹の面影を見出す。主人公はカムトから妹が死んでいたことを知らされ、カムトが妹のために買ったワンピースを着る。
2.作品解剖
(1)文体★★★
一人称、ひらがなを多用した文体で、セリフも含めると作品のほとんどが描写的な要素で構成されている。比喩は入りこみにくいものもあるが、工夫があって面白い。
(2)構成★★☆
はじめはローテンションな読み心地だと思ったが、カムトの妹の死という事実が明かされることをラストにもってきたことや、祈ることや土に埋めることなど細かい伏線まで効果的に機能している。
(3)論理★★☆
とくに違和感は感じなかった。
(4)テーマ★★☆
容易には言語化できない感覚や感情を小説全体によって描こうとしたように思えた。
3.総合評価と感想
総合★★★★☆
今まで読んだすばる文学賞にはない読み心地の作品だった。物語や設定の強さに頼りすぎずに文学にしか表現できないような部分まで描ききったことに好感をもった。土のモチーフに大江健三郎を、後半のカムトのひとり語りに多和田葉子を感じた。