純文学1000本ノック

ただひたすらに純文学の読書感想を並べていきます。

純文学1000本ノック 108/1000 木崎みつ子『コンジュジ』

どうも、こんにちは。

 

今回はすばる文学賞を受賞した木崎みつ子の『コンジュジ』です。

 

1.ざっくりあらすじ

 主人公のせれなは、子どものころわがままな母が家をでて、父が自殺未遂をした。すでに亡くなっているロックスターのリアンというという人物を知り、恋をする。父の新しい恋人が家に来ても、成長してから父に犯されても、リアンを心の支えとして生きていく。やがて、父は恋人に殺されるが、せれなは一人でリアンの幻覚を見ながら生活する。リアンの過去を調べるうちに、彼の不倫や薬物遍歴に失望するが、彼も父に犯されていたことを知る。

 

2.作品解剖

(1)文体★★☆

三人称的一人称で、せれなの視点、回想という形で自分の半生を振り返る。描写は少なめで展開が早いのですらすらと読める。

(2)構成★★☆

リアンをはじめて知った記憶から母がでていったところにいき、時間軸通りに現在までつづく。あいまに入れこんだリアンやバンドメンバーの半生が、せれなの心の拠りどころとして機能し、仕掛けとして面白かった。

(3)論理★★☆

父の暴力的な変貌にやや違和感を覚えたが、それ以外には感じなかった。

(4)テーマ★★☆

家庭環境によって心に闇をかかえた少女がどのようにして生きたのか、という部分が詳細に書かれていた。

 

3.総合評価と感想

総合★★★☆☆

気分の悪くなるような話ではあったが、リアンの存在が主人公と同じように、読者のなかでも落ちつける地点として有効に機能している気がした。