純文学1000本ノック

ただひたすらに純文学の読書感想を並べていきます。

純文学1000本ノック 105/1000 金城孝祐『教授と少女と錬金術師』

どうも、こんにちは。

 

今回はすばる文学賞を受賞した金城孝祐の『教授と少女と錬金術師』です。

 

1.ざっくりあらすじ

薬学部の学生である久野は、禿げ頭の江藤教授から育毛剤の共同研究をもちかけられた。久野は親戚から受け継いだ古い薬局のなかに油の研究室をもっていたからだった。久野は教授から油研究の先輩である永田を紹介され、その教え子である不思議な中学生の荻ちゃんと知り合い、別の場で現代の錬金術師とも知り合った。荻ちゃんは色盲で、久野がそのことに触れてしまい、行方不明になる。久野は荻ちゃんを見つけだす。

 

2.作品解剖

(1)文体★★☆

主人公の久野による一人称だが、冒頭と後半の一部分には語り手不明の人物があらわれ、錬金術や美術のことを語る。全体的にセリフが多い。

(2)構成★★☆

物語の構成は一本あるが、あいまの不可思議な出来事の数々で物語を感じさせない仕組みになっている。

(3)論理★★☆

漫画チックな世界観なので、変わった出来事も受け容れられる。

(4)テーマ★★☆

人間や宇宙の存在という壮大な部分から、錬金術という題材までいろいろ使われているが、これといって深部にくいこんだようなものは一読では読み取れなかった。

 

3.総合評価と感想

総合★★★☆☆

全体としてライトノベル幻想文学の融合作品というような印象をうけた。新しい分野への挑戦としていいと思うが、ライトノベルとしては仕掛けに弱く、純文学としては雰囲気に欠けているという感じも否めないかもしれない。