純文学1000本ノック 102/1000 奥田亜希子『左目に映る星』
どうも、こんにちは。
今回はすばる文学賞を受賞した奥田亜希子の『左目に映る星』です。
1.ざっくりあらすじ
小学生のころに勉強も運動も完璧な上、大人びた吉住という少年と出会った主人公の早季子は、コンプレックスだった左目だけの乱視という悩みを共有することで孤独感を解消した。中学生になってから吉住はコンタクトをいれて、人格も変わり、大人になってからも早季子は昔の吉住に焦がれていた。早季子は人と深く付き合わず、たまに一夜限りのセックスをして過ごしている。そんなとき、同じ乱視の宮内というアイドルオタクの男と知り合い、自分の孤独を共有できるかもしれないという想いで近づいた。宮内とは価値観がずれてばかりいるが、そのうち早季子はそれも楽しめるように成長する。
2.作品解剖
(1)文体★★☆
三人称的な一人称で、おもしろい表現も多いが、全体には物語のテンポを重視した文体に思える。
(2)構成★★☆
問題をかかえた個人の成長物語として、うまく流れができている。
(3)論理★★☆
とくに不明な点はない。主人公のキャラクター造形が母親からの圧力でできたということも論理的でさりげなく盛り込まれている。
(4)テーマ★★☆
人と人はなにをもってつながるのか、というように読んだ。孤独という一大テーマをおいておきながら、最後まで焦点があっている。
3.総合評価と感想
総合★★★☆☆
ややストーリー重視で説明過多なところがあり、独特の表現を抜くとエンタメ作品になるようなギリギリの部分で踏みとどまっているという印象。作品としてはやや暗く自意識の強い主人公ながら、爽やかな恋愛成長物語としてまとまっている。