純文学1000本ノック 93/1000 三木三奈『アキちゃん』
どうも、こんにちは。
今回は文学界新人賞を受賞した『アキちゃん』です。
1.ざっくりあらすじ
主人公のミッカーは、小学生時代つねに一緒にいたアキちゃんのことを強く憎んでいて、そのことを回想していく。アキちゃんは周りに取り入り自分より下だと思った人には強くあたるような人で、中盤でじつはアキちゃんが男だということが明かされる。主人公は呪いたいほど憎んでいたが、小学五年生のときに親の都合で引っ越して、大学に入ってから噂でアキちゃんが中学生になってひどい目にあったことを知る。
2.作品解剖
(1)文体★★★
回想の形をとった一人称で、語り手である未来の主人公が書いていることを意識している。言葉と言葉のつらなりに詩的で面白い部分がおおい。月並みな表現も意外と使われているが、ほかの部分でのうまさによりそれを感じさせない。
(2)構成★★☆
回想形式なので、時間軸にはそっているが、主人公の意識を中心に話の展開が進む。アキちゃんの好きな人の件からアキちゃんの兄の件に移行した部分の不自然さが欠点かと思った。
(3)論理★★☆
とくに引っかかるところはなかった。子ども時代の不思議な存在と大人になってから理解される宗教や貧富などのもろもろの要素の気づきが面白い。
(4)テーマ★★☆
「愛憎」という感じに読んだ。対象をさだめ、突き進んでいくのでぶれることなく作品がまとまっている。
3.総合評価と感想
総合★★★★☆
文体のおもしろさもあり、小学生時代の友人という素朴な題材をうまく描いているように思った。アキちゃんが男であるということも、好きな人が主人公かもしれないという部分や美少女の絵を汚い男に変えてしまう部分など伏線になっていて、うまい。唯一、引っかかったのはアキちゃんの兄の話に進む部分の不自然さだと思う。おそらく読者にたいして「アキちゃんが男である」という情報を盛り上がりまで抑えるためにおこなったように思えた。