純文学1000本ノック 78/1000 安部公房『砂の女』
どうも、こんにちは。
今回は安部公房の『砂の女』です。作者の代表的作品として、世界各国で翻訳されて読まれています。
1.ざっくりあらすじ
砂丘へ昆虫採集に出た男は、砂丘にある部落に一泊するつもりが、深い砂の穴に埋まりかけた家に監禁される。そこには女がいて、毎晩家が埋まらないように砂かきをしている。男は何度も逃走を試みるが、ことごとく失敗し、最後には、逃げられたのに関わらず逃げない。
2.作品解剖
(1)文体★★★
フィクションの世界を現実に創り出していると思った。ひらがなの多い言語感覚に、「錆びたブランコをゆするような、ニワトリの声」などオリジナルな比喩表現を多用している。三人称で描かれているが、視点は男に近く、たびたび男と重なる。
(2)構成★★★
男の失踪が語られ、物語に入っていく。男が監禁され、脱出を試みるミステリな展開に翻弄されていくなかで、男の現実人生と、砂かき生活を比べた回想によって、人間の本質を問いかけてるようである。
(3)論理★★★
ここまで飛躍した世界であるにもかかわらず、論理的に不明な点は特にない。
(4)テーマ★★★
現実生活と砂の穴の生活の対比から「人間の本質」「人生の目的」といったものを追求した作品に思えた。
3.総合評価と感想
総合★★★★★
ありえない世界を、リアルにしてしまう文体。詩情をもった文体。読者をひきつける奇想天外な展開。人間の存在に問いかけてくるテーマの深さ。小説にできるおおよそすべてのことを詰め込み、それらを調和させているように思える。