純文学1000本ノック 123/1000 柳美里『家族シネマ』
こんにちは。
今回は1997年に芥川賞を受賞した柳美里の『家族シネマ』です。
1.ざっくりあらすじ
主人公の素美は会社勤めをしながら、同僚の男と付き合いそこに住んでいる。ある日、映画の撮影隊がその部屋にやってくる。映画は妹洋子の繋がりではじまった家族をテーマにしたものだった。とっくに壊れた家族との撮影とともに、仕事を依頼した陶芸家の男と関係を深める。映画の撮影で家族でキャンプに行くが、家族は崩壊している。素美は同僚の男に別れを告げ、陶芸家の男のところに行くが、そこには別な女がいる。
2.作品解剖
(1)文体★★☆
私という一人称で、描写が主になった文体。細かな描写がうまく、登場人物の行動や回想で面白い箇所が散見される。具体的な時間軸をあまり書かず、唐突に場面転換する。
(2)構成★★☆
撮影隊が突然押しかけてくる出だしの良さが光っている。短い回想を挟みこみながら、家族の像を描いていく。
(3)論理★☆☆
全体的に気を衒ったような設定が多い気がした。映画の撮影をされる流れはどうも納得がいかない。また、会社勤めのはずの主人公が男の家にずっと住んでいることや、父の扶養保険証を使っている?のは設定としておかしい。
(4)テーマ★★☆
映画の撮影を通じて、壊れきってしまった家族を描いている。壊れた家庭で育った子供たちの歪みも随所に出てくる。
3.総合評価と感想
総合★★★☆☆
シーンとして面白い部分は多かったが、全体として疑問が多く残り、主人公の反発するわりに映画の撮影に参加しつづける理由もいまいち曖昧で入り込めなかった。